東京・日本橋は、江戸時代から文化・商業・情報の中心地として発展してきた。今、日本橋地域ルネッサンス100年計画委員会を設立して、21世紀の街づくりに取り組んでいる。
“黄昏の街”が甦るのか。その命運を握るのが、国の重要文化財に指定されている日本橋高島屋と日本橋三越本店である。顧客は富裕層と中高年、品ぞろえはコンサバティブ(保守的)といった“似た者同士”の老舗百貨店だったが、リニューアルを機に別々の道を歩むことになった。
日本橋高島屋は都市型ショッピングセンターに変身
高島屋は9月25日、日本橋店の隣接地に新館をつくり、都市型ショッピングセンターとして開業した。
高島屋は日本橋店の周辺エリアを三井不動産などと再開発した。投資額は160億円。新館(地下1階~地上7階)に111のテナントが入る。ファッションや飲食店のほか、ヨガ教室、茶道教室もある。モノを買うだけではなく、体験型の「コト消費」に関心がある若い世代に照準を合わせた店づくりをした。百貨店の新館ではなく、テナントから賃料をとって運営するショッピングセンターだ。これにより、安定した賃料収益の確保を狙う。
日本橋高島屋(旧館、新館)と、2015年に開店した時計専門館「タカシマヤ ウォッチ メゾン」、今年3月にオープンしたカフェ併設の「ポケモンセンタートウキョーDX&ポケモンカフェ」による“4館体制”になった。売り場面積は6万6000平方メートル。これを機に、全体の名称を「日本橋高島屋S.C.」に改めた。
日本橋店は、高島屋各店のなかでも相対的に地盤が低下してきた。18年2月期の日本橋店の売上高は、前期比1.0%増の1342億円。訪日外国人旅行者によるインバウンド消費を追い風にした大阪店の売り上げは8.8%増の1414億円に急増。日本橋店を抜き大阪店が1952年以来66年ぶりに首位に返り咲いた。
日本橋店の2019年2月期の売上高は18年同期比1.9%減の1316億円の見込み。横浜店(1.3%増の1333億円の予想)にも抜かれ、3位に後退することになる。
日本橋店の再生策として打ち出したのが、若いファミリー層をターゲットとした都市型ショッピングセンターへの転換だ。開業後1年間で新館に入居しているテナントの売上高を200億円以上に設定している。ショッピングセンター化をテコに、若い層を取り込むのが狙いだ。
若者シフトの第1弾が、ポケモンセンターの開設だった。ポケモン効果で入店客数は増えたが、売り上げ増に結びついたわけではない(下表を参照)。新館開業で日本橋店の売上高と入店客数がどうなるかが注目ポイントだ。新館の波及効果で、ジリ貧が続く日本橋店の減収に歯止めがかかるだろうか。
【日本橋高島屋 18年3~8月の売上高と入店客数の前年同月比伸び率】
以下、売上高、入店客数
3月 -0.4%、+12.6%
4月 -2.7%、+19.9%
5月 -5.9%、+6.6%
6月 -0.1%、+12.9%
7月 -11.0%、+10.4%
8月 -8.7%、+6.6%
(資料:月次営業報告書)