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致死率ほぼ100%「アフリカ豚コレラ」はすでに上陸 !?…警鐘鳴らす農水省とユルい政府に温度差

文=編集部
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致死率ほぼ100%「アフリカ豚コレラ」はすでに上陸 !?…警鐘鳴らす農水省とユルい政府に温度差の画像1アフリカ豚コレラ感染は食い止められるのか(画像はイメージ/© Fotolia)

 26年ぶりに流行している家畜伝染病「豚コレラ」。その猛威はとどまるところを知らないようだ。昨年9月以降、たびたび被害に見舞われている岐阜県は、その沈静化に失敗。今年2月に入り、いきなり隣県の愛知、長野、三重で“同時多発”してしまい、大阪にまで飛び火した。

「豚コレラのウイルスに感染するのは豚とイノシシだけですから、人には移りませんし、効果のあるワクチンもあります。ですから、政府は『拡大を防ぐ手はある』と甘く見ていたんです。しかし、5府県に被害が広がってしまい、2万頭近くが殺処分の対象になりました。養豚場の豚が次々と焼き殺される痛ましいニュースが各地から伝えられるようになり、政府もさすがに重い腰を上げました。遅まきながら、緊急閣僚会議を開いて対応策に乗り出しています」(民放社会部記者)

 だが、豚コレラをめぐる現実は、そんな生やさしいものではない。水面下では、致命的な状況がひたひたと進行しつつあるというのだ。

「豚コレラよりも猛毒で、ワクチンも効かず、致死率が100%近いといわれている『アフリカ豚コレラ』。これが中国全土で蔓延し、日本にもついに上陸したとみられているんだ。農林水産省の現場もそうした現実を認め、レポートにまとめて警鐘を鳴らしている。それなのに、安倍政権はだんまりを決め込み、大手メディアも取り上げようとしない。どういうわけなんだ」(畜産業界関係者)

 確かに、中国ではアフリカ豚コレラが猛威を振るい、昨年8月に感染が確認されてからというもの、中国の7割に上る省や自治区に被害が拡大。累計90万頭を殺処分しても被害は収まらず、東アジア全域に拡大しつつある。しかし、アフリカ豚コレラの日本上陸について、政府は口を閉ざす。2月8日の衆院予算委員会でも、同ウイルスの対策を質された吉川貴盛農水相は、水際対策の徹底ぶりをこう主張するばかりだった。

「春節の期間に入り、中国人旅行客が日本にやってきて、アフリカ豚コレラの進入率が高まっています。探知犬の増頭を実施し、防疫官による旅客の携帯品検査も実施しています。SNSによる持ち込み禁止の周知もしています」

 しかし、現実に起こっている状況と、大臣答弁とは大きな温度差があるようだ。農水省の発表ベースでも、昨年から今年2月13日までに、アフリカ豚コレラに感染した豚が使用された餃子やソーセージなどを来日した中国人旅行客が持ち込んだケースは、10例見つかっている。それらの食品からは、コレラウイルスの遺伝子が検出されたのだ。発見現場は札幌、羽田、中部、関西、福岡の各空港。農水省関係者は以下のように語る。

「なかでも、愛知の中部国際空港で見つかっているケースが多い。というのも、中国・上海の空港とは2時間足らずで結ばれているから、一泊旅行のノリで気軽にやってくる中国人が多い。現在流行中の豚コレラが岐阜で発症したのも、中部国際空港から入国した中国人旅行客たちが岐阜に足を伸ばし、持ち込み禁止の餃子入り弁当を食べたのが原因とみられている。その残飯をイノシシが食べて、養豚場の豚に移した可能性が高い。こんな形で豚コレラが日本に持ち込まれたのなら、同様にアフリカ豚コレラが上陸してもおかしくない」

農水省レポートが上陸可能性を指摘

 実際、農水省は、アフリカ豚コレラが上陸している可能性があると認めるレポートを昨秋、すでにまとめていたのだ。

 農水省畜水産安全管理課が発行している定期刊行物「家畜衛生週報」(2018年11月19日号)によると、豚コレラが各地に広まる前の昨年11月時点で、すでに羽田空港などで2件のアフリカ豚コレラを確認。韓国や台湾でも中国人旅行客が持ち込んだソーセージや餃子からアフリカ豚コレラの陽性反応が確認され、中国発の家畜伝染病は東アジアに広がりつつあると指摘した。その上で、「家畜衛生週報」はこう訴えていた。

「本号で紹介しているとおり、中国からの旅客の携帯品から、アフリカ豚コレラの遺伝子断片が見つかりました。2例目になります。既にアフリカ豚コレラウイルスは、我が国に侵入していることを前提に対策すべきです。各養豚農場では、ウイルス侵入防止について、危機感を持って対応いただくよう、改めてお願いします」

 豚コレラの大流行が始まる前の昨秋の時点で、農水省レポートがここまで踏み込んでいたとは驚きだろう。アフリカ豚コレラはすでに食品経由で感染が起こっていることを前提にすべきだと警鐘を鳴らし、養豚場の現場がそれぞれ感染イノシシと接触させないよう対策を求めたのだ。

 今回、あらためて農水省に見解を聞いてみると、食肉加工品からアフリカ豚コレラの遺伝子が発見された例のうち3例については、検査の結果、感染源になる可能性はないが、残りについては現在も検査中だという。「アフリカ豚コレラ発生の事実は確認されていないが、細心の注意を払い、対策を行うべき」という姿勢だ。さらに驚愕の証言がある。岐阜県内の獣医師関係者はこう語る。

「豚コレラとアフリカ豚コレラのウイルスの型は別物で、別々の検査薬を使わないといけない。ところが、現在は豚コレラのウイルス検査にばかり注力し、アフリカ豚コレラの検査はほとんど行っていないんだ。調べないのだから、感染状況などわかるはずもない。政府がウイルスの侵入を水際で食い止めているというのは、根拠の乏しい強弁にすぎないんだよ」

 現場の農水省職員たちが、猛毒のアフリカ豚コレラが上陸している可能性が高いと訴えているのに、政府もメディアも「病気の発生の事実がない」ことを理由に、緊張感に欠ける対応をしているのが現実だ。

 思えば、「月例勤労統計」のデータ改ざんを起こした厚生労働省が繰り返し引き合いに出され、霞が関に対する信用はすっかり失墜してしまった。だが、農水省の現場は正しいデータを基に、誠実に警鐘を鳴らしている。それを政治家や大手メディアがスルーしてしまい、真実が公にならないだけなのだ。われわれは先入観にとらわれず、霞が関の現場が発するシグナルを見落としてはいけないではないか。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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