
機械学習、ディープラーニング(深層学習)が登場してAI(人工知能)に注目が集まっているが、AI産業はこれまでのソフトウエアをめぐる競争から、半導体チップの競争に時代は変わった。世界のAI産業はソフト処理よりも高速に処理を行い、かつ消費電力を下げるため、AI用半導体チップ開発に乗り出しており、日本勢もなんとか食らいついている。
ソフトのプリファードネットワークスもAI半導体を開発
日本でAIのトップ企業であるプリファードネットワークス(PFN)が、AIの学習用半導体チップを自社開発してサーバに搭載した。コンピュータラックにサーバを搭載し、いよいよ動作評価へと移る。また、国内のグラフィックスIPを手掛けるディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)は推論用IPを販売して1年以上経つ。
米国では、GoogleやNVIDIA、Xilinxなどに続き、IBMがAI専用チップを本格的に開発し始めた。これまでAIの学習用ハードウエアではNVIDIAのGPU(作画するためのグラフィックスプロセッサ)が適していたため使われてきたが、GPUだと消費電力が200~300W/チップと大きいため、AIに特化した半導体チップを設計しようというわけだ。PFNのチップの狙いも、実は電力効率を上げるためだ。
IBMは自社だけではなく、サムスンやシノプシス、アプライドマテリアルズ、東京エレクトロンなどともパートナーシップを組み、エコシステムをつくり始めている。現在のAI、すなわちディープラーニングは、コンピュータに学習させ、その学習させた教師データと、AIを使う現場でのデータを比較して推論を行うというシステム構成が多い。
IBMはこれまで、PowerアーキテクチャのCPUをベースにした機械学習マシン「ワトソン」を使い、AIビジネスを進めてきた。研究開発フェーズでは、ディープラーニングというより脳を模倣したニューロモルフィックなマシン「TrueNorth」を開発してきた。しかし、同社のエンジニアの証言によれば、TrueNorthは計算負荷の軽い推論のマシンであり、モバイルのような用途を狙っていたという。
ワトソンからAIチップの開発へ
ディープラーニングも脳の神経細胞をモデルにしたニューラルネットワークを使って学習・推論する技術である。ここでは、パーセプトロンモデル(1個の神経細胞を多入力・1出力の論理素子とみなすモデル)をベースにするが、これ以外の脳の働きをモデル化するアーキテクチャを一般にニューロモルフィックと呼ぶことが多い。ある意味、ディープラーニングもニューロモルフィックの一種であるが、これとは別に扱うのが一般的である。