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日本ペイント、外資に実質“乗っ取られる”までの顛末…経産省と大ゲンカした人物が会長就任

文=編集部
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 身の丈を超えた巨額買収に走りがちな経営陣に歯止めをかけるため、ハップジン氏はかねて「取締役会を、経営を監督する場にしたい」と話していた。

 新体制では社外取締役は従来の2人から5人に大幅に増え、取締役の半数となった。社外取締役には元ジャスダック証券取引所社長の筒井高志氏、安川情報システム社長の諸星俊男氏らが就いた。

 ウットラムは悲願としてきた日本ペイントHDの“乗っ取り”に成功。ハップジン氏が日本ペイントHDの実質的なオーナーとなった。

 日本ペイントHD改革の第2弾が、田中氏を会長に招聘することだった。

 日本ペイントHDの18年12月期の連結決算の売上高は前期比3%増の6229億円だが、営業利益は12%減の662億円だった。中国を含むアジア事業が売上高全体の6割を占める。だが、主力の中国市場で不動産の投資規制を背景に住宅販売が伸び悩み、建築用塗料の販売が鈍化した。これが営業減益の原因だ。田中氏の見識を生かし、海外事業のテコ入れをはかる。

経産省と高額報酬をめぐり対立

 田中氏は1953年生まれで、東京大学法学部卒。77年に三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行し、2007年に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の米ユニオン・バンク・オブ・カリフォルニア(現ユニオン・バンク)頭取兼CEOに就き、リーマン・ショックの対応にあたった。11年、MUFGが巨額出資した米モルガン・スタンレーの取締役に就任。MUFGの副社長に登りつめ、トップ候補と目されたが、15年6月に退任した。

 18年9月、産業革新投資機構(JIC)が発足。“ゾンビ救済機構”と揶揄された産業革新機構を改組。JICの初代社長CEOに金融庁参与の田中氏が就任した。

 新投資機構は国内最大級の投資会社だ。政府保証枠の約2兆円に旧革新機構の出資を回収した資金、民間資金を呼び込む。子会社として経済産業相の認可を受けたファンドをつくり、このファンドを通じて企業に出資する。人工知能(AI)など成長分野で高い技術を持つ企業を選別して資金を供給する姿勢を示した。

 報酬をめぐり、経産省相手に大立ち回りを演じた田中氏とは、どんな人物なのか。仲間内では「ケンカまさ」と呼ばれており、MUFGのトップ候補と目されていながら、退任したのは「人望のなさが災いした」(MUFGの関係者)といわれた。

 その田中氏が、日本ペイントHDの会長に就いた。オーナーであるウットラムのハップジン氏と波長は合うのか。「ケンカまさ」の本領発揮を期待する向きもある。
(文=編集部)

【追記】

●豪州の塗料最大手を3000億円で買収

 中国依存の収益構造から転換するため、8月に豪州の塗料大手、デュラックスグループを約3000億円で買収する。デュラックスの全株式を取得する。日本ペイントHDの売り上げは7割弱が中国などアジアだ。中国だけで4割に達する。

 4月17日、記者会見した田堂哲志社長は「中国一辺倒はリスク」と語った。今後も海外で塗料メーカーをM&A(合併・買収)する方針だ。

 デュラックスは豪州とニュージーランドの塗料市場で5割のシェアを持つ。日本ペイントHDにとっては過去最大のM&Aとなる。3000億円は全額、銀行からの借り入れ。豪州証券取引所に上場しているデュラックスの株価に3割近いプレミアムをつけた。

 だが、大型買収に対する株式市場の警戒感は強い。4月17日、日本ペイントHDの株価は一時、16日比で4%(180円)下落し、4240円をつけた。

BusinessJournal編集部

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