“日の丸液晶”の崩壊
“日の丸液晶”といわれたジャパンディスプレイ(JDI)が4月3日、台湾と中国連合の傘下に入ることを決めた模様だ。事実上、“日の丸液晶”が崩壊したわけだ。
JDIは2012年に、日立製作所、東芝、ソニーの液晶パネル事業を統合し、経済産業省が所轄する旧産業革新機構が筆頭株主となって2012年に設立された。2014年に株式上場したが、筆者は最初からこの会社には期待していなかった。その理由は以下の通り。
(1)日立、東芝、ソニーの3社の統合がうまくいくはずがない。このような統合による失敗は、エルピーダメモリやルネサス エレクトロニクスで実証済み。
(2)初代社長の大塚周一氏は、JDI設立の数カ月前の2012年2月に倒産したエルピーダの元COO(最高執行責任者)。その実績から、3社の経営統合など、できるはずがないことは実証済み。
(3)経産省が関与して、旧革新機構が出資し、筆頭株主になっている。これまで政府が関与して成功した事例がないことも実証済み。
以上で終わり――では記事にならないので、もう少しJDIの実態を詳しく分析してみよう。その上で、JDIの顛末は、“日の丸DRAM”のエルピーダ、“日の丸半導体”のルネサスと、なんら変わらないことを示す。それにしても、経産省も旧革新機構も、何度同じ過ちを起こしたら気がすむのだろうか。
JDIの業績
JDIの売上高、営業利益、および純利益の推移を図1に示す。売上高は、2016年の9891億円でピークアウトしている。営業利益は、2014~2017年までは、かろうじて黒字を維持していたが、2018年に617億円の赤字に転落した。5年間の合計で、たったの62憶円しか稼げていない。
純利益は2015年以降、赤字となり、5年間では合計2846億円ものマイナスである。“ゾンビ企業”と揶揄されても仕方がない体たらくである。
次に、JDIの分野別売上高とiPhoneの出荷台数を図2に示す。JDIの主要な収益源がアップルのiPhone用液晶パネルであることはよく知られているからだ。
2016年までは、iPhoneの出荷台数の成長と共に、JDIのモバイル売上高も増大していく。ところが、2016年以降、iPhoneの出荷台数の成長が止まる。また、2017年以降は、iPhoneがパネルに有機ELを採用し始める。JDIは、有機ELの準備がまったくできておらず、その結果、2016年をピークに売上高が激減する。