印刷などを手掛ける廣済堂は4月9日、1月に発表したMBO(経営陣が参加する買収)に基づき、米ベインキャピタルと経営陣が実施していたTOB(株式公開買い付け)が成立しなかったと発表した。応募株式数が買い付け予定株数の下限に満たなかった。
廣済堂をめぐっては、旧村上ファンド系のレノと南青山不動産が3月20日、「TOBの買い付け価格が低すぎる」として、MBOに対抗するTOBを発表した。
ベインキャピタルは経営陣が実施するTOBの買い付け価格を610円から700円に引き上げたが、レノ側は1株当たり750円で買い付ける。
MBOに伴うTOBが不成立になったことで、レノ側のTOBが成立するかに焦点が移った。買い付け期間は4月18日までである。
レノと南青山不動産は共同で廣済堂株を3月20日時点で13.47%保有。保有比率が50%となる910万株を下限に買い付けを行っている。
新明和工業は400億円の自社株買いを実施
「物言う株主」旧村上ファンド系の動きが目立つ。昨春、レノなどが東証1部上場の新明和工業の株式を取得した。レノは2018年4月11日、大量保有報告書で新明和株の発行済み株式の5.46%を取得したことを明らかにした。
その後も買い増しを続け、19年2月26日には23.74%に達した。この間、共同保有者は交代。最終的にはレノや南青山不動産、エスグラントコーポレーション、リビルドの4社の名義となった。
レノは旧村上ファンドを率いた村上世彰氏の直系といえるファンドだ。そのレノが新明和に目をつけた。
新明和は特装車が主力で、ゴミ収集車では国内でトップのシェアを誇る。同社は戦時中、戦闘機「紫電改」や飛行艇「二式大艇」を製造していた川西航空機が前身。航空機部門では現在、救難飛行艇「US-2」を製造している。
安倍晋三首相がインドのモディ首相にトップセールスし、武器輸出第1号と期待されていたのが救難飛行艇「US-2」だった。
村上氏は防衛関連である新明和株を買い占めて揺さぶりをかけた。これに対して、新明和は19年1月21日、400億円を上限とする自社株買いを実施すると発表。自社株買いの完了を条件に、19年3月期の年間配当を従来予想から8円増やし45円(前期実績は23円)とする。