吉野家とケンタッキーのアプリ利用者が増加している理由…“クーポンのハブ”化するスマニュー
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
前編に引き続き、同社のコンサルティング本部長の岡田雄伸氏、「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、2019年第1四半期(1~3月)を中心にアプリの動向を聞いた。
KFCや吉野家のアプリ利用者、なぜ増加?
――前編に引き続き、19年1~3月を象徴するアプリについてお話をうかがいます。
岡田雄伸氏(以下、岡田) その期を象徴するようなすごいアプリが生まれたわけではないのですが、前編でお話しした「Pinterest(ピンタレスト)」のように、既存のアプリの中で、足腰が強く、堅調に伸ばしたものがいくつかあります。
私からは、ニュースアプリ「スマートニュース」といくつかの飲食店の公式アプリ、ここでは「すかいらーく」と「ケンタッキー・フライド・チキン」と「吉野家」のアプリを紹介します。これらの伸びには関係があると思っています。
図1が、スマートニュースと各飲食店アプリのMAU(Monthly Active User:月間アクティブユーザー数。App Apeにおいては月に1回以上アプリにアクセスのあったユーザー)の推移です。
――吉野家はちょっとなだらかではありますが、いずれも19年から伸びが急になっていますね。なぜなのでしょうか?
岡田 この時期、スマートニュースが「クーポンチャンネル」という飲食店の割引クーポンを提供するサービスを始め、テレビCMでも積極的な訴求を始めました。先ほど紹介した飲食店は、すべてスマートニュースでクーポンが提供されています。
推測ですが、スマートニュースでガスト(すかいらーく)やケンタッキー・フライド・チキン、吉野家のクーポンを見て、ユーザーが実店舗に行き、その後各店舗の公式アプリもダウンロードした流れがあるのかなと思います。
「スマニュー」千鳥のCMが画期的だった理由
――スマートニュースの飲食店クーポン紹介のテレビCMを見ると、最初に千鳥の2人が「スマートニュース!」と言った後、一瞬、アプリトップのニュース画像が出ますが、すぐに飲食店のクーポンに移り、飲食店のクーポンがこんなにある、と訴求して終わりますよね。スマートニュースがニュースアプリであることの紹介は、ほぼありません。
岡田 スマートニュースのようなニュースアプリが飲食店のクーポンを提供すること自体は、前からあった流れなんです。ただ、ここまで大々的に「ニュースサイトが飲食のクーポンも提供している」というテレビCMを打ったのは、今回のスマートニュースが初めてだと思います。
――以前、18年4~6月期を象徴するアプリに「セブン-イレブン」を挙げていただきました。このときも、アプリそのものの機能は割引クーポンなど取り立てて目新しくないものの、急激にユーザーを増やしたのは「アプリの紹介をメインにしたテレビCMを積極的に打ったから」でしたよね。こうしてみると、「テレビ離れ、テレビからネットへ」という論調もありますが、「テレビ見つつ、スマホ見つつ」という層は厚いですね。
また、グラフを見ると、そもそも利用者の母数はスマートニュースが圧倒的に多いんですね。
岡田 やはり、ニュースアプリは場所を選びませんからね。すかいらーくグループのガストやケンタッキー・フライド・チキン、吉野家は全国的な展開をしている大型チェーンですが、それでも生活圏内に店舗がない方も少なくないでしょうから。
また、スマートニュースのアプリを入れておけば、さまざまな飲食店のクーポンのハブになってくれますから、個々の飲食店のアプリは入れない、という選択をするユーザーもいるかと思います。
――私はエントリー型の安いスマートフォンを使っているのでスマホの容量に余裕がないんですよね。そういう人にとっては、あれこれ導入しなくていい「クーポンのハブ」があれば便利ですね。
「令和」もスマホの通知で知る人が続出?
日影耕造氏(以下、日影) その他のアプリのトピックとして、時期的に今回の対象となる1~3月からはずれてしまうのですが、19年4月1日に新元号「令和」が発表された瞬間の動きについても、当社のオウンドメディアで調べています【※1】。
まず、当日の政府からの配信状況ですが、ツイッター、フェイスブック、ユーチューブ、インスタグラムには政府の公式アカウントがあり、そこからライブ配信をしていました。ほか、主要なインターネットメディアとしては「AbemaTV」と「ニコニコ生放送」が生中継をしていましたね。
――昭和から平成になったときは、これらのサービスはすべて存在していなかったというのが感慨深いですね。
日影 4月1日は月曜日で、新元号の発表は11時台でした。図2が、通常の月曜日と元号が発表された4月1日のツイッターの時間帯別利用者の比較です。発表があった11時台は通常の1.66倍と、平日の午前中としては異例の利用者数を記録しました。
また、「ヤフーニュース」をはじめ、多くのニュースアプリがプッシュ通知で「号外」を出していましたね。
――「通知」によって、スマホで新元号を知った人も多いでしょうね。
日影 新聞の号外も発行されましたが、速報性ではアプリに分がありますよね。紙の号外は記念品やコレクターアイテムというふうに、意味合いが変わったのだと思います。
(構成=石徹白未亜/ライター)
【※1】
『新元号「令和」発表の瞬間をアプリで生配信 実際にどれくらいの人がアプリを使ったのか?』(App Ape Lab)
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