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中国の威信崩れる、初の国産空母が就航延期…艦載できる戦闘機が“ない”と発覚

文=相馬勝/ジャーナリスト
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中国人民解放軍 香港で基地開放(写真:ロイター/アフロ)

 中国で初の国産空母である通称「001A」の就航が、当初予定の今年4月から大幅にずれ込んでいることが明らかになった。大きな原因は艦載機が決まらないことだ。

 ウクライナから購入した中国初の空母「遼寧」の艦載機は「殲15(J-15)」だが、故障が多く事故も発生しており、海軍首脳は「艦載機としては不適格」として早々と断念。次の候補としては「殲31(J-31)」や「殲20(J-20)」が有力候補となっているものの、2つともは艦載機としては一長一短ありで、訓練でも満足な結果が出せず、001Aの就航は大幅に遅れて2020年代後半にもずれこむ可能性もあるという。

 001Aは最大排水量7万トンで全長315m、12年に就役した遼寧の発展型で、初の純国産空母になる。001Aは遼寧と同じ旧式のスキージャンプ台型甲板を備えているが、管制塔やブリッジを一新し、レーダーや電子装備を改良。17年4月に進水し、18年5月から19年1月まで4回の試験航海を重ねており、早ければ今年4月に就航の予定と報じられた。

 しかし、いまだに就航していない。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、その最大のネックは艦載機だった。

 当初、001Aは32機のJ-15戦闘機を搭載できると伝えられていた。だが、そのJ-15のエンジンや制御システムに問題があり、これまでに死亡事故1件を含む4件の墜落事故を起こしている。このうち2件は重大事故となっており、「空母着陸体制時に飛行システムのエラーが生じて墜落した」という。

 また、中国のニュースサイト「新浪軍事網」は「J-15がステルス戦闘機に対応できない」ことを最大の弱点としており、海軍首脳は一時、「中国産の第4世代ステルス戦闘機J-31を艦載機に採用した」と伝えた。

 一方、中国共産党機関紙「人民日報」系列の「人民網」も中国の軍事専門家、曹衛東氏の話として、「中国の遼寧艦と2隻目の空母艦載機の発艦方法はスキージャンプ型だ。現時点でステルス機を配備するならば、J-31の可能性が高い」と報じている。しかし、問題はJ-31はまだ初期段階で、現在、飛行試験を続けており、最終的な完成までにはまだ時間がかかるとみられていることだ。さらに、艦上バージョンは地上バージョンの完成後、それを改良して、飛行テストをクリアしなければならず、艦載機として採用されるのは地上バージョン完成の数年後になる可能性が高い。

 サウス紙によると、その間の臨時の代替機としてJ-20が検討されているものの、J-20が搭載する国産エンジン「WS-15」は技術的にも性能的にも1世代古く、艦載機として使用する場合、耐久性の問題で実用化に難があるほか、エンジンに塩害対策も講じなければならず、腐食性の高い素材の開発も行わなければならない。同紙は「陸上機として開発されたJ-20を空母で運用するということは、そう簡単な話ではなく、J-20艦載機化には10年前後の時間がかかる」と結論づけている。

(文=相馬勝/ジャーナリスト)

 

 

 

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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