今年も10月31日、ハロウィンの日が近づいてきた。
さまざまなコスプレをして大人たちが楽しむという日本独自のハロウィンカルチャーは、5~6年前から急速に普及してきたものだ。東京・渋谷駅周辺には一夜で数万人が訪れるともいわれており、例年、渋谷駅前のスクランブル交差点などの大混雑ぶりがマスコミに報道されている。
年々盛り上がりが増していく渋谷ハロウィンだが、今年はハロウィン当日の10月31日が平日ということもあり、直前の週末となる27日から多くの人出が予想されていた。つまり、今年の渋谷ハロウィンは実質的に27~31日の5日間と見込まれている。
今年の“渋谷ハロウィン”が5日間もある理由とは?
そこで、筆者が渋谷ハロウィン初日となる27日に渋谷の街を訪れたので、レポートしたい。
去年までのハロウィンで痴漢、スリ、暴力事件などが多発していることもあり、警視庁は人出を見込んで27日から警備を強化。スクランブル交差点に「DJポリス」を派遣し、周辺に多くの制服警察官も配置した。
20時に渋谷駅に到着し、渋谷駅前のハチ公像周辺や、スクランブル交差点を見た際、率直にいうと「ハロウィンのブームもピークアウトしたかもしれない」と感じた。確かにすごい人出ではあったが、想像していたほどではないというのが第一印象だったのだ。
筆者はここ数年、渋谷ハロウィンの取材を行っているが、特に印象深かったのが2014年10月31日だ。このときは当日が金曜日だったため、人出が集中したということもあるが、14年の渋谷の人口密度の高さは尋常ではなく、渋谷駅周辺や渋谷の繁華街エリアは、文字どおり身動きが取れないほどだったのである。
今振り返ると、この14年のハロウィンの異常な盛り上がりを、テレビなど多くのメディアが大々的に報じたことが、15年以降の渋谷ハロウィンに拍車を掛けたように思う。先述したとおり14年のハロウィン当日は金曜日で、15年は土曜日、16年は月曜日、17年は火曜日、今年は水曜日となっている。
14年と15年はハロウィン当日が週末だったため、コスプレをして渋谷に繰り出す人々は31日に集中していたが、その様相に変化が訪れたのは16年だ。ここ3年はハロウィン当日が平日となっているため、その直前の週末から渋谷の街にコスプレをして訪れる人々が現れるようになり、渋谷ハロウィンが事実上、複数日化したのである。こうした経緯があり、18年の渋谷ハロウィンは27~31日の5日間と過去最長となっている。
だが、結論を言うと、18年の渋谷ハロウィンは、累計で過去最高の人出になるだろうというのが、初日の27日に渋谷を見ての感想である。
コスプレ率減少、外国人増加、YouTuber出現
20時の時点では、まださほど騒然とはしていなかった(もちろん、普段の何倍も騒がしかった)が、それからもどんどん人出が増していき、22時の時点では渋谷駅前やセンター街はカオス化。特にセンター街には多くの人が流れ込み、通りが人で埋め尽くされ、牛歩状態であった。
それでも14年のほうがまだ人口密度が高かったように感じたが、14年は一日集中で、今年は5日間に分散されることを考えると、年々、盛り上がり続けているというのは紛れもない事実だろう。
だがそれと同時に、渋谷を訪れる層に、確かな変化も見て取れた。筆者が感じた大きな変化は3つ。
ひとつ目は、コスプレをしている人の割合が少ないことだ。目測だが、渋谷を訪れた人のうち、本格的なコスプレをしていたのは3割ほど。要するに、7割ほどが“コスプレをしている人を見に来ている人”なのである。14年も今年も筆者はコスプレをしていないのだが、14年はコスプレなしで渋谷にいるほうが浮いている印象さえあったものの、今年はその感覚は皆無。コスプレ率が減ったことに寂しさも感じるが、非コスプレの人でも気軽に訪れることができるようになったともいえる。
2つ目は、外国人観光客の多さだ。渋谷はもともと外国人観光客が多い街ではあるが、普段の数倍はいただろう。海外の日本観光ガイドのようなサイトでは、渋谷のハロウィンが一大イベントのように紹介されていることもあるようなので、その影響に違いない。外国人観光客は私服の人もいるが、ノリノリでアメリカンコミック(アメコミ)や日本アニメのコスプレをしている人も少なくなかった。渋谷ハロウィンを日本独自文化として偏見なく受け入れ、楽しんでいるように見えた。
3つ目も時流を感じたことだが、動画のネタにと撮影に来ているユーチューバーが複数いたことである。そこかしこで一般客にインタビューをしたり、絡んだりしている様子を動画撮影している若者たちがいたのだが、おそらくそれらはみなユーチューバーなのだろう。筆者が確認しただけでも10~20組のユーチューバーらしきチームが撮影に勤しんでいた。なかには有名ユーチューバーもいたようで、そのまわりには芸能人のように人だかりができており、改めてユーチューバー人気を実感させられた。
ちなみに、コスプレをしてきている人々は、舌を巻くほどのクオリティーの高さを披露していた。特殊メイクを施してリアリティのある“ホラーコスプレ”を追求する人。人気アニメやゲームのキャラを再現している人。また、バニーガールや女豹に扮し、脚を惜しげもなくさらして胸元も開けるなど、露出の高い“セクシーコスプレ”をしている若い女性も見受けられた。水着とまではいかないものの、それに近い露出度の女性が都心の路上に現れると、その場の非現実感がさらに増すものだ。
こういった非現実的な高揚した雰囲気こそ、渋谷ハロウィンの醍醐味なのかもしれない。
(文=昌谷大介/A4studio)