ZOZOと前澤社長、すでに限界だった…ヤフーによる買収は孫正義氏の英断、無限の成長へ
ヤフーがZOZOを電撃的に傘下に収めることになり、4000億円ともいわれる巨額な投資額と相俟って大きな話題となっている。9月15日付日本経済新聞記事『ZOZO、薄らぐ革新性』は、次のように分析している。
「創業から約20年たち薄らいできた革新性を、前沢氏が去った後も維持できるかが課題となる」
しかし、私の見解では、ZOZO単体としてのダイナミックな革新性の復活、継続は難しい。今回の提携でより重要なことは、ヤフーとZOZOがアライアンスによってお互いの事業を補完し合い、新ビジネスモデルを創出することである。そこに革新性のタネがある。ヤフーの親会社、ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏は、例によって直観的にその戦略的可能性を見抜き、ZOZO創業者で前社長の前澤友作氏からの相談に身を乗り出したのだろう。
限界を見せていた前澤革新経営
ヤフーがZOZOに対してTOB(株式公開買い付け)を実施し、前澤氏が保有株を売却すると発表したのが9月12日のことだった。発表会見にはサプライズで孫氏も登場し、大きな話題となった。前澤氏が孫氏にZOZOの将来を相談したことから、「瓢箪から駒」が出るようにヤフーがZOZOを引き受ける方向に舵が取られたという。
2人とも創業オーナー経営者なので、決断がいつも早い。孫氏は10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンドの第2号の設立や(5月に発表)、ZOZOへの4000億円投資などを即断できる、今や世界でも屈指の投資家の面目を躍如させたといえる。
前澤氏はZOZOの株式の36.76%を持つ筆頭株主で、今回のTOBでその大半をヤフーに売却し、売却額は2500億円近くに上るといわれる。前澤氏はTOB発表日の9月12日付けでZOZOの社長を退任した。
ZOZOという大成功したファッションECサイトを立ち上げた前澤氏だったが、2016年の「ツケ払い」(2カ月後の支払い)導入あたりを境に、世間を震撼させるようなユニークな革新的ビジネスはあまり見受けられなくなった。それどころか、打つ手の「当たり」が悪くなってきていた。
まず、ZOZOに参画しているアパレルメーカーの商品だけでは不安になったのか、プライベートブランド(PB)の展開を模索し始めた。17年11月にそれが発表された時、私は「ZOZOに出店しているアパレルメーカーと競合する」と危惧した。