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リニア新幹線、開通遅れ必至の情勢…静岡県、わずか「9キロ」の工事着工を許さず

文=編集部
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 かたくなな静岡県の姿勢に対して愛知県の大村秀章知事は「まず着手し、不都合があれば立ち止まって考えればいい」と譲歩を促した。三重県の鈴木英敬知事も、これに同意。山梨県の長崎幸太郎知事は「安全・安心に重大な関心を持って主張するのは当然」と静岡県に理解を示すが、「予定通りの開業」を望んでいることに変わりはない。

静岡空港近くに東海道新幹線の新駅を造れ

 静岡県の川勝知事はリニア計画自体に反対しているわけではない。むしろ推進派だ。その一方で、川勝氏はディール(取引)の人ともいわれる。最初に高値を吹っかけ、交渉の過程で妥協点を見つける。大井川の水資源問題も落としどころを、ちゃんと用意している。

 6月11日の会見で川勝知事は「リニア工事は静岡県にまったくメリットがない」と主張。「工事を受け入れるには代償が必要だ」と述べた。工事を認める代わりに、静岡県内に東海道新幹線の新駅を建設せよということのようだ。川勝知事は以前から静岡空港に近い新幹線の新駅設置を要望していたという事情もある。こうした川勝知事の態度に、静岡県島田市の染谷絹代市長は「水を守ろうとしている私たちまで、駄々をこねているように見られる」と苦言を呈した。

 東海道新幹線の静岡駅と掛川駅の間に静岡空港がある。JR東海は「空港近くにはすでに掛川駅があるので、(新駅は)不可能」との立場だ。JR東海の金子社長は6月12日の会見で、リニア開通後、東海道新幹線の各駅停車「こだま」や「ひかり」の増発余地があることに触れ「(停車駅の多い列車が増えれば)一番メリットがあるのは静岡県だ」と強調した。東海道新幹線の17駅のうち6駅(熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松)が静岡県内にある。

 静岡県とJR東海の協議は続いているが解決のメドは立っていない。菅義偉官房長官は9月6日の閣議後の記者会見で、リニア中央新幹線の建設工事をめぐる静岡県とJR東海の対立を解消するために政府が関与する姿勢を示した。静岡工区は17年着工、26年11月に完成の予定だった。着工はすでに2年遅れている。

 リニア中央新幹線は東京―大阪間を約1時間でつなぐJR東海の大型プロジェクトだ。総事業費は9兆円で、うち3兆円は財政投融資を活用する。東京(品川)―名古屋間の27年開業は絶望的だ、との見方が浮上。物理的にみて、開業を延期するしかないようなのだが、JR東海のドン、葛西敬之名誉会長は27年開業を諦めていないとされる。78歳の葛西氏は時間との闘いをしているわけで、万難を排して、予定通りのリニア開業を望んでいるのだろう。

(文=編集部)

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