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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

日本はとっくに“製造業の国”“輸出主導型経済”ではない…認識の欠如が経済停滞の原因

文=加谷珪一/経済評論家
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消費者のマインドを考慮しなければ経済政策は機能しない

 では、経済構造が消費主導型にシフトした今、どうすれば消費拡大で経済を成長させることができるのだろうか。個人消費というのはニワトリとタマゴの関係であり、経済学的には何が消費拡大の原動力になるのか明確に示されているわけではないが、消費者のマインドが大きく影響していることだけは間違いない。

 現在、個人消費が極端に低迷しているのは、消費者が将来に対して大きな不安感を持っているからである。高齢化が進み、年金財政が悪化しているのは紛れもない事実であり、これを誤魔化して美辞麗句を並べたところで、不安の解消にはならない。年金減額が避けられない以上、消費者の将来不安を取り除くためには、今後、長期にわたって就労できるという安心感が必要となる。

 だが、この安心感を終身雇用や解雇の禁止というかたちで担保しては意味がないだろう。

 消費社会というのは、多くの個人が多種多様なアイデアを出し合い、生み出された商品やサービスを消費者がポジティブに評価してこそ、うまく回っていく。日本社会は基本的にネガティブであり、新しいことに対する抵抗感が根強く、これが新しい産業の創出や消費の拡大を阻害している。わかりやすい言い回しをすれば日本社会は基本的に「しかめっ面」なので、これでは豊かな消費社会を実現できないのだ。

 残念なことに、政府が企業に雇用を強制すると、社会の流動性が低下し、こうしたネガティブで閉鎖的なカルチャーが拡大することがあっても、縮小することはない。むしろ、転職を推奨し、新しいスキルを身につけるための教育プログラムにこそ多額の支出を行うべきである。

 仮に解雇されたり、役職定年や再雇用で望まない仕事を斡旋された場合でも、教育プログラムを受けて新しいスキルを身につけることができ、その間に、十分な失業保険が給付されるのであれば、あまり深刻になる必要はない。

 転職が活発になれば、組織に新しいアイデアが入ってくるので、新規事業が立ち上がる頻度は確実に高まる。遠回りなようだが、こうした地道な取り組みを行わない限り、日本経済に未来はない。

(文=加谷珪一/経済評論家)

加谷珪一/経済評論家

加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。
加谷珪一公式サイト

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