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『半沢直樹』の金融庁・黒崎検査官のモデルが死去…旧UFJ銀行を消滅させた男

文=有森隆/ジャーナリスト
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UFJ銀行誕生(2002年1月15日)(写真:ロイター/アフロ)

 池井戸潤の小説シリーズを原作とする人気テレビドラマ『半沢直樹』(TBS系/2013年放送)に登場する黒崎検査官のモデルといわれる、金融庁の統括検査官だった目黒謙一氏が12月2日、亡くなった。72歳。「伝説の検査官」と呼ばれた。目黒氏は1966年、高卒で旧大蔵省に入省。ノンキャリアのエースとして、金融機関の検査を担当。辣腕を振るった。2003~04年のUFJ銀行に対する検査で不良債権の引き当て不足を指摘。三菱UFJフィナンシャル・グループへの再編につながったといわれている。

 その後、検査監理官として大手銀行すべてを担当。背中で後進を指導。2007年に退官した。拙著『銀行消滅』(上、講談社+α文庫)で在りし日の目黒氏を活写している。以下にその一部を抜粋する。

内部告発

「14階に隠された資料がある。調べてください」。はじまりは、1本の匿名電話による内部告発だった。2003年10月9日の朝、東京・大手町のUFJ銀行東京本部で特別検査にあたっていた金融庁のチームに、マル秘資料を隠匿してある部屋のルームナンバーを伝える電話が入った。

 検査官12人の指揮を執るのは金融庁検査局第四部門の目黒謙一・統括検査官。目黒検査官が、告げられたルームナンバーの部屋に入ると、段ボール箱がうずたかく積まれていた。数にして100箱余。目黒が段ボール箱の一つから書類を取り出すと、かたわらにいたUFJの行員が、慌てて、その書類を取り上げて破ろうとした。行員は「これはまったく関係ない資料です」と必死に抗弁した。

 UFJ銀行の二重帳簿が発覚した瞬間である。2002年9月30日、小泉純一郎改造内閣の閣僚名簿の発表をテレビで見ていた前・金融相の柳沢伯夫は「金融担当相、竹中平蔵」とのアナウンスに「これは仰天人事だ」と叫んだ。「これ以上の公的資金の注入は必要ない」と言い続けていた柳沢が更迭され、柳沢と鋭く対立し、不良債権処理の加速を主張してきた竹中が金融相に任命されたのだから、金融界にとってもまさに仰天人事だった。

 金融相に就任した竹中は同年10月30日に『金融再生プログラム─主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生』を発表した。貸出金の引き当て強化と税効果会計の見直しによる自己資本算定の厳格化を柱とする「竹中プラン」である。大手行に対して、2005年3月末までに不良債権比率を半減させるよう要求した。ここから不良債権処理の荒療治がはじまった。全国銀行協会会長だったUFJ銀行頭取の寺西正司は「銀行はルールの中で経営されている。サッカーをしていたのに、突然、アメリカンフットボール(のルール)だといわれても困る」と反発した。根本的なルール変更に経営陣がどう対処したか。これが、その後の大手行の命運を分けた。

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