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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

高所得の夫が扶養控除を受けたほうが得なのに、控除対象を妻から変更するのに失敗!

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人
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「Getty Images」より

 元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな扶養家族は「特定扶養親族」です。

 所得税には、さまざまな控除があります。お金を負担していれば控除を受けられますが、家族のなかでそのお金を誰が負担しているかは曖昧です。たとえば、夫婦で生活費を負担しているような場合、夫の父親をどちらが扶養しているといえるでしょうか。

 夫の父親だから「夫」でしょうか。税法では、そのような考え方はしません。負担していれば、夫婦のどちらでも控除を受けられます。もちろん、ひとりの人間が、2人の控除対象となることはできませんので、どちらか一方になります。今回は、子供が夫婦どちらの扶養家族となるか、納税者が行った扶養控除を変更することができるかについて争われた事例です。

確定申告後の修正は不可能

 個人事業者であるAさんは、毎年確定申告をしています。生計をひとつにする子供が3人いますが、扶養控除は受けていませんでした。それは、パートをしている妻が扶養控除を受けているためです。ちなみに、子供は16歳以上の扶養控除を受けられる年齢です。

 Aさんは、夫婦のどちらかしか扶養控除を受けられないことを知っていました。しかし、知人から「夫婦の所得の高いほうが扶養控除を受けたほうが得だよ」と聞かされていました。確かに今までは、経費が多く所得が低かったので、パートの妻に扶養控除を受けてもらったほうが、家計全体では得していました。しかし、計算してみると、今年は売上が伸びたため所得が高くなり、自分が扶養控除を受けたほうがいいことに気づきました。

 所得税は累進課税なので、扶養控除の金額は同じでも、所得が高く所得税率が高い人が控除を受けるほうが、納める税金が多く減ります。Aさんは、修正申告により確定申告をやり直そうとしましたが、「課税される所得金額を減らす修正申告はできない」と言われてしまいます。修正申告は、所得が増えるときにだけできるのです。

 そこで、「更正の請求」という手続きを行うことにしましたが、「それもできない」と通知されてしまいました。

 扶養家族が夫婦どちらの所属となるかは、一度確定申告書に記載された後でも、他の確定申告書に異なる所属を記載することで変更することが可能です。しかし、今回の場合、パートの妻は、医療費控除のために確定申告書を提出し、そこに扶養控除を受ける旨を記載していました。また、Aさんは確定申告をし、扶養控除を受ける旨を記載していませんでした。その後には修正申告ができないため、更正の請求をしたわけです。

 この場合、税法はどのように扱うのでしょうか。結論を言うと、更正の請求は、扶養家族の所属を変更する手続きに該当せず、変更は認められませんでした。Aさんは、こう主張しました。

「妻の控除の金額は、扶養控除がなくても所得の金額を上回っているから、扶養控除を受けても所得税の金額は1円も変わらない。扶養控除の金額を確定申告書に書いているけれど、実際には扶養控除を受けていないのと同じ。だから、扶養家族の所属を私に変更する手続きを認めるべきじゃないか!」

 しかし、Aさんの主張は認められず、扶養控除は受けられないまま、1年分の控除が無駄になってしまいました。Aさんの話を聞いて思うのは、Aさんの奥さんに深い知識があれば、このような事態は免れたのではないかということ、そして修正申告をすれば扶養控除が受けられたのではないかということです。

 Aさんは個人事業者で顧問税理士もいないので、個人的な支出を経費としている可能性があります。それを自ら探し、否認することで所得が増えます。すると、更正の請求ではなく、修正申告をすることができます。その修正申告のついでに、扶養控除を受けることができるのではないでしょうか。

 この修正申告については、ほかの事例が見つからず判断が難しいのですが、兎にも角にも知識の量が行動の限界を決めると思います。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

●さんきゅう倉田
大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。2017年12月14日、処女作『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)が発売された。

「ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員が社会をサバイバルするために必須の知識のみを厳選。たのしく学べます」

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