富士フイルム、米ゼロックス買収失敗で“報じられない甚大な損失”

富士フイルム、米ゼロックスの買収断念(写真:つのだよしお/アフロ)

 富士フイルムホールディングス(HD)の米事務機器大手ゼロックス買収は失敗に終わった。米ゼロックスとの合弁会社、富士ゼロックスの米ゼロックスの持ち分の25%の株式を23億ドル(約2500億円)で買い取り、富士ゼロックスは富士フイルムHDの100%子会社となった。57年間に及ぶ合弁事業は解消。市場が成熟しているとはいえ、事務機部門は富士フイルムHDの営業利益の4割を稼ぐドル箱だ。

 古森重隆会長兼CEOは19年11月5日の記者会見で、「合弁会社では経営の自由度やスピードに問題があった。合弁解消で販売地域の拡大や新しいサービスが可能になる」と強調したが、M&A(合併・買収)の失敗は大きな痛手だ。

 富士ゼロックスは日本と海外企業の協業の成功例とされてきた。販売地域は富士ゼロックスが日本を含むアジア太平洋、米ゼロックスが欧米と、はっきり分けてきた。18年の複合機世界シェアは両社合計で16%と世界4強の一角を占める。

米ゼロックスと販売提携を解消

 富士フイルムは米ゼロックスとの販売提携契約を21年3月末で解消。今後は自社ブランドを立ち上げ、米ゼロックスが販売を担当してきた欧米にも自社ブランドで参入する。富士フイルムと米ゼロックスは完全にライバル関係となる。子会社の富士ゼロックスが1月5日、21年3月末以降は契約を更新しないと米ゼロックスに伝えた。

 富士ゼロックスは21年4月に富士フイルムビジネスイノベーションに社名を変更する。米ゼロックス向けのOEM(相手先ブランドによる生産)は当面、続けるとしているが、米ゼロックスがどう出るかは流動的だ。

 富士フイルムHDは18年1月、米ゼロックスの買収を発表。一体運営による収益向上を狙った。だが、「物言う株主」として知られるカール・アイカーン氏らが猛反対。アイカーン氏が推薦する経営陣を受け入れた米ゼロックスは契約を破棄した。富士フイルムHDは損害賠償を求める訴訟を起こし、買収交渉は2年近く膠着状態が続いた。

 富士フイルムHDが75%の株を持つ富士ゼロックスを使って、米ゼロックスを「現金支出ゼロ」で買収しようとしたことに、アイカーン氏らがかみついたのだ。古森氏が買収発表の記者会見で「ゼロ円買収」を前面に打ち出したのが、そもそもの戦略ミスだった。「買収するなら身銭を切れ」というわけだ。この主張が説得力を持った。

“失われた2年”の間に事務機を取り巻く市場環境が急激に悪化。中国や欧州で景気が減速した。富士フイルムHDは米ゼロックスの買収を断念し、富士ゼロックスを完全子会社にすることで事態の収拾をはかった。米ゼロックスは合弁解消を発表した翌日の19年11月6日、米IT機器大手ヒューレッド・パッカード(HP)に買収を提案した。富士ゼロックス株の売却で得た資金を充てる。買収額は3兆円規模。アイカーン氏もこの買収の後押しをしている。だが、HPの取締役会は「評価が低すぎる」として買収案を拒否。米ゼロックスは敵対的買収を目指している。小が大を飲み込むM&Aだ。

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