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イオン、23年ぶり社長交代、世襲への布石か…総合スーパー赤字、アマゾンの脅威増長

文=編集部
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イオン店舗(「wikipedia」より/Kirakirameister)

 イオンが23年ぶりの社長交代を決めた。3月1日付で創業家出身の岡田元也社長(68)は代表権のある会長に就任し、吉田昭夫副社長(59)が社長に昇格する。社長交代は1997年以来となる。

 吉田氏は83年4月ジャスコ(現イオン)に入社以来、店舗開発畑一筋だ。東北開発部長(2005年)、イオンリテール関東開発部長(09年)、イオンモール国際企画部統括部長(11年)、イオンモール営業本部長兼中国担当・常務(14年)を経て、15年にイオンモールの社長に就任した。19年3月にイオン本体の代表執行役副社長に就任し、ディベロッパー事業とデジタル事業を担当した。デジタル事業では次世代の小売り事業のモデル構築を目指してきた。

 イオンは、(1)総合スーパー(GMS)や食品スーパー(SM)改革、(2)デジタルシフト、(3)アジアシフトの3つを最優先課題に掲げる。米アマゾン・ドット・コムの伸長など小売業界でもデジタル化が進み、事業環境が激変している。イオンは明らかにデジタル化への対応で遅れている。吉田新社長は「オンラインとリアル(店舗)がつながるなか、リアルの強みをどう生かせるかだ」と店舗改革への意気込みを語る。

創業家の御曹司への世襲をにらんだ布石か

 23年ぶりの社長交代で、世襲問題に関心が集まるのは仕方がない。岡田家の御曹司、岡田尚也氏(36)は19年3月1日、フランス発祥の有機食品などのオーガニック専門スーパー、ビオセボン・ジャポンの社長に就任した。尚也氏は外資系金融会社を経て、15年1月にイオンリテールに入社。ミニスーパーを展開する「まいばすけっと」店長を経て、16年11月、ビオセボンの営業部長となり、店長を経験後、同社社長に昇格した。

 父親の岡田元也氏はかねて「世襲は私で終わり」と口にしたが、社長引退会見では「本人(尚也氏)がどういうふうに考えるかもわからないので、なんとも答えようがない」と含みをもたせた。吉田新体制の下で、いつ尚也氏がイオン本体の執行役員に昇格するのか。世襲を占うポイントとなる。

英ネットスーパーとの提携でアマゾンに対抗

 吉田氏はデジタル担当として英国のネットスーパー「オカド」との提携を主導した。19年11月、オカドとの業務提携を発表し、オカドが持つロボットを駆使した物流ノウハウを生かし、数百億円規模のネットスーパーの売上高を6000億円に拡大する計画だ。オカドは2000年の創業。英国事業だけで売上は2000億円を超える。物流センターに配置した自動箱詰めロボットなどの技術力が強み。「英国では注文を受け付け倉庫から(商品を)出庫するまでの時間は15分。競合他社の5分の1程度」とアピールする。

 オカドは世界の食品スーパーと相次ぎ提携し、米アマゾン・ドット・コムの対抗軸を構築してきた。日本では小売業最大手のイオンが、その戦列に加わった。イオンは08年からネットスーパーを手掛けるが、苦戦が続く。全売上高に占めるネット比率は約1%と国内の平均(約6%)を大きく下回る。

 イオンがデジタル化の対応で後れをとるなか、アマゾンが着々と食品分野に触手を伸ばしてきた。アマゾンにとって生鮮食品はハードルが高いとされてきたが、食品スーパー最大手のライフコーポレーションと提携し、ネットスーパーに本格参入する。イオンは20年3月までにネットスーパーの事業会社を設立。オカドのノウハウを取り入れて、23年にロボットを駆使した自動倉庫を建設。人工知能(AI)で最適・最短の宅配ルートを提案するシステムを構築し、配送時間を短縮する。オカドとの提携を突破口に、デジタル社会に対応した次世代の小売り事業へと転換を急ぐ。

GMSは大苦戦、金融と商業施設で稼ぐ

 現社長の岡田元也氏は創業者の岡田卓也・名誉会長(94)の長男。1979年、イオンの前身のジャスコに入社し、97年にイオン社長に就いた。M&A(合併・買収)をテコに店舗網を拡大。会社更生法を申請したマイカルを支援し、2013年には最大のライバルだったダイエーを完全子会社に組み入れた。地方スーパーなども次々と傘下に収め、グループ店舗数は国内外で約2万2000店に達し、国内小売業で最大手となった。

 20年2月期の連結決算の売上高は19年2月期比1%増の8兆6000億円、営業利益は同8%増の2300億円、純利益は同6%増の250億円と見込む。だが、地方の郊外店には過疎化、高齢化の波が押し寄せる。食品や衣服などを幅広く取り揃えるGMS(総合スーパー)は大苦戦。イオンの第3四半期(19年3月~11月)連結決算のGMSの9カ月間の営業損益は181億円の赤字。SM(食品スーパー)の営業利益は45億円にとどまる。

 一方、総合金融が396億円、ディベロッパーが437億円の営業利益を叩き出した。同期間の全社の営業利益1030億円のうち、総合金融が38%、ディベロッパーが42%を稼いだことになる。金融事業はイオン銀行、WAONによる電子マネー決済、クレジットカードサービス、さらには住宅ローンなど。ディベロッパー事業は商業施設イオンモールの不動産開発だ。いい土地を見つけ、土地の権利を手に入れ、銀行資金を引き出して巨大なショッピングモールを建設する。

 イオンの稼ぎ頭が金融事業と不動産事業という事実は、日本の小売業の苦境を如実に物語っている。

BusinessJournal編集部

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