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中村芳子「お金のことで苦労せず、人生を楽しむためのお金の基本」

“コロナ破産”を防ぐ具体的6ステップ…固定費削減、給付金手続き、住宅ローン返済猶予も

文=中村芳子/アルファアンドアソシエイツ代表、ファイナンシャルプランナー
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新型ウイルス肺炎が世界で流行 緊急事態宣言下の東京(写真:アフロ)

 4月16日、緊急事態宣言の対象が全国に拡大された。幅広い業種にわたり影響が広まり、多くの人たちが収入減に直面している。この危機に個人はどう対応したらいいか。ファイナンシャルプランナーから具体的な対策を提案したい。

 アメリカ、イスラエル、オーストラリア、フランス、イラン、オランダ、中国、韓国、シンガポールなど海外の友人が多いので、いろいろな国の対応をリアルタイムで、海外の媒体で追いかけている。そこからはっきりと、次のことが言える。

(1)正しい情報を 

(2)早く手に入れて

(3)自国の状況を把握し  

(4)最悪の状況を想定し

(5)有効な対策を考え

(6)素早く実行し 

(7)必要な援助をまわりに要請する

 以上を実践した国は、被害が小さく立ち直りが早い。これは私たち個人のお金にも当てはまる。ぜひ参考にしたい。

Step1:落ち着いて自分の現状を把握する どれだけ収入が減ったか、減るか

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『50代のいま、やっておくべきお金のこと 新版』(中村芳子/ダイヤモンド社)

 突然、大きく収入が減り、いつ回復するかわからない。「どうしよう」と不安になってしまうのは当然。あなただけじゃない。まず、落ち着こう。肩に入っている力を抜いて深呼吸をする。そして、現状をしっかり見る。前月と比べて、あるいは前年の今頃と比べてどのくらい収入が減ったのか。

 残業代がなくなって10%マイナスの会社員。派遣の仕事がなくなって失業手当を受けることになって34%減になる人。仕事が激減して50%マイナスのフリーランス。「いくら減るか」によって対策が違ってくる。

 次に、この状況がしばらく続いたら、売上や収入はどうなりそうか。楽観的な数字と最悪の場合の数字と両方考えてみる。「2カ月間無収入」「6カ月間無収入」という具合だ。最悪の事態を予測するのは、悲観的になるということじゃない。その事態を想定して、あらかじめ対策を立てておくことで、何があっても落ち着いて対処することができるようになる。

Step2:今の家計支出は、どうなっているか

 次に知りたいのは、今までの家計支出がどうなっているか。預貯金や資産はどうなっているか。現状を知ることが問題解決のカギ。でも、自分の家計をわかっていない人は多い。

 今までの家計支出が月30万円。でも25万円まで節約できるというなら、月25万円を3カ月〜半年分確保する作戦を立てよう。これで生き延びられる。

 でも、「多分できそう」という態度では、30万円の支出を25万円にすることはできない。「何にいくら使っているか」がわかっていないと、どの出費をいくら削ればいいか、作戦が立てられない。がむしゃらな節約は苦しいだけで成果は上がりにくく、何より続かない。これは長期戦になるかもしれないのだ。

 自分の支出がわかってない人は、今からでも支出を記録しよう。銀行口座やクレジットカードと連携できる家計簿アプリを使うと、正確な支出額をつかむことができる。まだ使っていない人は、この機会に導入しよう。

(家計アプリについてはこちら

Step3:節約の作戦を立てる 項目ごとに具体的な金額を決める

 支出の現状がわかったら、節約作戦スタートだ。毎日の暮らしにダメージが少ないところから出費を削っていく。ちょっとした心がけで減らせる候補は次の通り。ゼロにする必要はなく、現実に減らせる金額を目標にする。

・飲み代

・外食費

・カフェ代

・コンビニのお菓子、飲み物代

・娯楽費(ゲーム、漫画、ネット番組サービスなど)

・スポーツクラブ

・被服費

・美容関係

・趣味費、こづかい

 これで不十分なら、毎月定額でかかる「固定費」も見直すと、出費を大きく削れるかもしれない。減収が深刻なら子どもにかけるお金も減らす覚悟で。

携帯電話などの通信費

・ケーブルテレビ代

・生命保険料

・子どもの塾・習い事

 大きな決断が必要だが、大幅減収が長期間続くならこんな対策も必要だろう

・車を手放す

・家賃の安いところに引っ越す、実家に戻る、友人とルームシェアする

 収入予測と今の支出の現状から、月5万円、月8万円という現実的な節約の目標金額をまず決める。それを達成するために、たとえばこんな節約プランが可能だ。

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 具体的な金額目標がないと、飲みに行くたび、外食するたび、コンビニで買い物するたびに、罪悪感を感じる。すべての出費をゼロにしようと無理で無駄な努力をして苦しくなる。収入が回復してきたら、自分に大切な出費から緩めていく。スポーツクラブでのエクササイズ、カフェでの息抜き、ネイルサロン、スーパー銭湯、家族旅行。つまらない飲み会や通信費、生命保険の無駄を減らした分は、そのまま続ければいい。

Step4:公的なサポートを調べる、問い合わせる

 節約だけでは追いつかないこともある。もらえる給付金やサポートは、もらいそびれがないよう必ず手続きをしよう。政府、地方自治体などのウェブサイトは定期的にチェックする。事態が長引けば、新しい援助策が登場したり、2回目の給付が受けられる可能性もある。給付が受けられることが確実なら、それをもとに出費の計画を立てられる。

  現時点(4月20日)で個人向けの主な給付、支援は次の通り(利用には一定の条件を満たしている必要がある)。

・現金10万円給付 

 日本に住所のある日本人と外国人(在留資格がある)が対象

・持続化給付金

 フリーランスを含む個人事業主などが、外出の自粛や需要の落ち込みの影響を受け、売上が大きく落ち込んでしまったときに受け取れる。

・生活福祉資金貸付制度

 新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされたり、失業に追い込まれたりして生活費に困ったときに、生活資金を借りられる。

・住宅確保給付金

 休業や失業などで収入が減り、家賃が払えない人に、国や自治体が家賃を支給する制度

・公共料金の支払い猶予

 電気、ガス、水道など公共料金の支払いが難しくなった場合、支払いを先延ばしすることができる。いずれも申し出が必要。

・税金等の支払い猶予

 納税の猶予や減免なども受けられる場合がある。いずれも申し出が必要。

・無利子・無担保の融資

 フリーランスを含む個人事業主などが、外出の自粛や需要の落ち込みの影響を受け、収入が大きく落ち込んでしまったとき、生活資金を無利子・無担保で借りられる

 知っていないと申し込めない。申し込まないと受け取れない。情報力と行動力がカギだ。

Step5:交渉する、助けを求める

 節約し、公的な援助を利用しても、それでもお金が回らなくなるかもしれない。ここで交渉力がものをいう。

 住宅ローンの返済プラン変更を金融機関に交渉する。理論的には、一定期間ローンの利息だけを支払い、その分返済期間を延ばすという対応が可能だ。対応は銀行や支店によって違ってくるかもしれない。この要望が多く寄せられれば、銀行として国としての対応が期待できるかもしれない。

 アパートの家賃が払えないときは大家さん、貸主に交渉する。数カ月支払いを待ってもらえば、ずいぶん楽になるはずだ。どちらの場合も、数カ月後から確実に払えるという裏付けを出せれば、交渉成立の可能性は高いだろう。

 親や親戚に一時的な借金を申し込むのは、古典的だが有効な手段だ。酒や博打で散財したのではないので、資金を工面してもらえる確率は高いのではないだろうか。のちのトラブルを回避するためにも、借用証書を交わしておこう。ゼロ金利の時代なので、貸主がOKなら金利はゼロで大丈夫だ。

 一時的に実家に戻る、友人の家に居候するというのもある。借りはあとで返せばいい。今生き延びれば、挽回のチャンスは後からいくらでもつくれる。

Step6:クレジットカード、キャッシング、リボ払いは使わない

 ここまで、やるべきことを話してきたが、最後はやってはいけないこと。

 手元のお金が足りないから、といってクレジットカードで払ってはいけない。生活費が足りないからとキャッシングやカードローンを使ってはいけない。一括払いは苦しいからと、リボ払いにしてはいけない。

 カード払いで一時的にはしのげても、15〜18%の高金利の借金がどんどん膨らむことになる。コロナが終わり収入が元に戻っても、返済に追われて苦しくなり、任意整理や自己破産することになるリスクが高い。せっかく努力して乗り越えたことが、水の泡になってしまう。今までクレジットカードを使っていた人は、収入の減少に対処するため、デビットカードに切り替えよう。クレジットカードと連携している○○Payも使わない。デビットならカード支払いと同時に銀行預金口座から利用代金が引き落とされるので、借金が膨らむことがない。苦しいからこそクレジットカードは使わない。肝に銘じてほしい。

 この文章を書いている段階では、緊急事態や外出自粛がこれからどうなるか、感染者数や死者数はどうなるのか、まったく読めない。でも、ひとつだけ言えることは、明けない夜はない、ということだ。1929年の大恐慌からも、2008年のリーマンショックからも世界は回復してきた。スペイン風邪も、新型インフルエンザも、エボラ出血熱も世界は乗り越えてきた。今回だって、楽じゃないけど大丈夫だ。

 大切なのは明るい気持ちを持ち続けること。収入が減っても資産が減っても、命があれば大丈夫。お金のことは必ず解決できる。フレー!

(文=中村芳子/アルファアンドアソシエイツ代表、ファイナンシャルプランナー)

※個人のお金に悩みに回答する「FP相談」を承っています。FP相談、および本記事に対するお問い合わせはこちらへ。50代からのお金の質問、悩み相談も受け付けています。  

中村芳子/アルファアンドアソシエイツ代表、ファイナンシャルプランナー

中村芳子/アルファアンドアソシエイツ代表、ファイナンシャルプランナー

1985年よりFP業に携わる日本のFPの草分け。 女性FP協会(現WAFP関東)の設立者の一人、初代理事長。 1991年に会社を設立。パーソナル・コンサルティング、金融記事の執筆、金融企画のアドバイスなどを行っている。マネックス証券創業時より7年間アドバイザーをつとめる。みずほ銀行の夫婦向けマネーサイト「おうちのおかね」(2010―2016)を監修。辛口だが、お金だけにとらわれないユニークで温かいアドバイスが人気。


主な著書に『50代のいま、やっておくべきお金のこと』『20代のいま、やっておくべきお金のこと』(以上ダイヤモンド社) 『女性が28歳までに知っておきたいお金の貯め方』(三笠書房) などがある。『3日でわかる聖書』『養子でわくわく家族』『神の津波』など、お金以外の著書や翻訳もある。

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