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午堂登紀雄「Drivin’ Your Life」

コロナ後、リモートワーク定着で「完全成果主義」「会社や上司への無駄な気遣い消滅」加速

文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの影響による外出自粛で、多くの企業(特にホワイトカラー職を中心に)がリモートワークに切り替えています。というか強制的にリモートワークに舵を切らざるを得ない状況ですが、これが長引けば私たちの働き方(経営者や自営業者にとってはビジネスモデル)が大きく変わる可能性があります。

 そこで私個人の勝手な想像で、会社員(現場仕事がないホワイトカラー)のアフターコロナ時代の働き方イメージをご紹介します。

1.完全なる成果に基づく評価体制に

 出社していないということは、働いている姿を見ることができません。つまり、努力しているかどうかはわからないため、評価されるのは仕事の成果のみということになります。

 そして、労働時間も関係なくなります。タイムカードもなく出退勤という概念もなくなるため、何時間働いていても成果が出なければ評価はゼロ。逆に、1日1時間の労働でも、成果さえ出せれば高い評価を得ることができます。

 これは、優秀な人にとっては就業時間に縛られない自由な環境が得られるメリットがある一方、そうでない人にとっては、本人のダメさがあぶり出されてしまうという恐怖の環境になります。つまり優秀な社員とダメな社員の二極化がさらに加速します。

2.オンラインマネジメントスキルが必須に

 上司のマネジメントスキルにも同じことがいえます。たとえばビデオ会議ツールがうまく使えないとか、それこそ「どうやって接続するんだ」などと言っているようでは、もはや部下から尊敬されることはないでしょう。また、従来の「見張るだけ上司」も駆逐されます。「課長の席」「部長の席」もありませんから、威厳を示すことはできません。

 実際、オンライン会議になったとたんに寡黙になる上司は少なくないようです。ウェブ上で閲覧履歴が残り、電子認証や電子印鑑が主流になれば、決済の遅い上司も丸見えです。的確なファシリテーションや具体的な指示、迅速な決済ができない上司は駆逐されていきます。

3.仕事の生産性が上がる

 オンラインミーティングも、やってみたら「結構行けるじゃん」と感じた人は少なくないと思います。そして、「あいさつ程度の面会」は不要になりますし、隣に同僚がいないため、話しかけて(あるいは話しかけられて)時間を消耗するということがなくなります。むろん、ダラダラ残業や「上司がいるから帰れない」などといったこともありません。すると本質的に重要な打合せだけをリアルでやればよいので、移動などのロスもなくなり、生産性の向上が期待できます。

 また、テキスト主体のコミュニケーションになるため、「上司が席を外していて相談できない」ということがなくなります。そして無駄な会議がなくなります。報告や共有程度ならメールやPDFの配布で済むからです。仮に無駄な会議がオンラインでなされても、「手元が見えない」ために堂々と内職ができます。

4.セルフマネジメントの重要性が増す

 ただし、リモートワークで逆に生産性が下がる人がいます。それは、モチベーション維持や時間管理、オンオフのメリハリをつけるなどといった「セルフマネジメント」が不得意な人です。そういう人はそれまで、「自宅はくつろぐところ」であり、帰宅してから読書や勉強をするといった自己投資の習慣がありません。そのため、書斎がないからリビングで仕事しようとしても、家にいるとどうしてもテレビをダラダラと観たりなど、むしろ生産性が下がるのです。

 こういう人は、カフェやコワーキングスペースなどを利用すると良いでしょう。また、常に人と接することで自分の存在を確認していた人は、孤独に弱くストレスが溜まるようです。そういう人は、「自分と見つめ合い、自分で自分のことを認めることができる」内省力を鍛えるチャンスと捉えることです。

5.パラレルキャリアが拡大する

 個人と会社との距離感も変わると考えられます。働いている姿が見えないということは、会議やミーティング以外の時間は何をしても自由です。ずっと会社に縛り付けられてる時代とは異なり、「ブラック企業」も消滅します。そして副業や自己投資、ボランティアや地域での活動など、個人ができることの幅が広がります。

 たとえば「大学院に通っているのでお先に失礼します」などという気遣いも無用で、逆にいうと上司や同僚や先輩後輩がやっていることも見えず、会社との関係はもっとドライになりそうです。

 そして、「ホワイトカラー全員個人事業主化」を促進させるように思います。これは個人にとっては大いなるチャンスであると同時に、会社と自分を同化し滅私奉公で働いてきた「社畜」人には受難の時代かもしれません。

6.事業構造の転換

 企業にとっても自営業者にとっても、「外出しないとできない」ワークスタイルからの転換を余儀なくされています(といいつつ、ニュース等の報道を見る限りは、通勤者がそれほど減っていないようですが)。

 先ほどの電子印鑑や電子決済を採用したり、アナログだった中小企業でも一気に通信環境を整備させるところが増えています。「もはや大きなオフィスは必要ない」と気づいた企業は、フリータイム出社・フリーアドレスを制度化し、オフィスの縮小に動くかもしれません。空室やオフィス賃料の下落圧力が大きくなれば、地価下落・不動産価格下落につながる可能性もあるでしょう。

 飲食店なども、テイクアウトだけでなく通販との合わせ技など収入源の多様化を図っていくと考えられます。自営業者で悲鳴をあげているのは、下請け仕事など「誰かから仕事をもらっている」人です。そこで「自ら商品をつくって値段をつけて売る」ビジネスモデルにシフトせざるを得ないでしょう。

「ピンチはチャンス」という言葉があるように、コロナ禍というピンチでそのまま沈んでしまうのか、あるいはチャンスに変えられるかは、個々人の受け止め方、そして発想の転換や行動次第です。今は苦しくても、もらえるものはすべてもらい、借りられるお金は最大に借りて、今を生き延びること。同時に、「再びコロナのような状況が来ても耐えられる体質」に変えようと考えることです。

(文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役)

午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役

午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役

 1971年、岡山県瀬戸内市牛窓町生まれ。岡山県立岡山城東高等学校(第1期生)、中央大学経済学部国際経済学科卒。米国公認会計士。
 東京都内の会計事務所、コンビニエンスストアのミニストップ本部を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして勤務。
 2006年、不動産仲介を手掛ける株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。2008年、ビジネスパーソンを対象に、「話す」声をつくるためのボイストレーニングスクール「ビジヴォ」を秋葉原に開校。2015年に株式会社エデュビジョンとして法人化。不動産コンサルティングや教育関連事業などを手掛けつつ、個人投資家、ビジネス書作家、講演家としても活動している。

Twitter:@tokiogodo

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