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村井英一「お金の健康法」

コロナ経済対策の裏で財政悪化深刻、消費再増税の検討も…近年の赤字削減努力が吹き飛ぶ

文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの感染拡大は峠を越えたようです。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、新規の感染は依然として続いており、感染拡大の第二波、第三波の発生が心配されます。「新しい生活様式」が求められ、消費が以前の水準まで戻るのは時間がかかりそうです。

すでに今年度の予算は1.5倍の規模へ

 緊急事態宣言が出ていた間は、外出自粛で消費が大幅に落ち込み、この3~4カ月は、観光や外食産業では対前年比で9割以上も売上が下落するなど、悪夢のような事態になりました。休業する店舗も多く、資金繰りに窮する事業者や、解雇される従業員も少なくありません。支援策を求める声が相次ぎ、政府は対応に追われました。

 当初は大幅な収入減となった人だけを対象に給付金を支給する予定でしたが、すべての国民を対象に一律10万円を支給することになりました。また、売上が大幅減となった法人には200万円、個人事業主には100万円を給付します。従業員に休業手当を支払う場合には、その9割を補てんします。

 これらの支援策は、2020年度の予算を決めた後に、第一次補正予算として計上されました。さらに間髪を入れずに第二次補正予算が組まれ、感染収束後の景気回復を目指す施策が盛り込まれています。当初の予算が102.7兆円なのに対して、第一次補正予算は25.7兆円、第二次補正予算は31.9兆円と、かつてないほどの規模になっています。

 今後、さらに第三次、第四次と補正予算が組まれる可能性もありますが、第二次補正予算の段階で、財政規模は当初予算に比べて1.5倍以上になっています。この第一次、第二次補正予算の財源は、すべて国債、つまり政府の借金です。

コロナ対策で、日本の財政状況はさらに悪化へ

 突然、経済がストップするような緊急事態で、対策の立てようもない不可抗力でした。そのため、政府の支援を求める声はあっても、財政悪化を心配する声はほとんどありません。コロナが収束すれば、経済が回復することが期待されますが、「新しい生活様式」によって回復には時間がかかるかもしれません。そう簡単に税収が増えるわけではなく、国の借金は簡単には解消できそうにありません。

 日本の財政状況はもともと、かなり厳しい状況になっていました。対GDP比での政府・地方自治体の債務残高は、先進国のなかでも断トツに高い状況が続いています。ヨーロッパで高いほうであるイタリアでも133%なのに対して、日本は240%弱です。そこに、新型コロナ対策という“大盤振る舞い”をしてしまいましたが、将来に禍根を残すことはないのでしょうか。

 この10年ほどは、政府の財政支出はほとんど増えず、横ばいを維持していました。対して税収は、景気の拡大もあって増え続け、毎年の財政赤字は徐々に減っていました。借金を減らすまではいかないものの、増やさないようにはしていたわけです。ところがその努力は、この数カ月で一挙に吹き飛びました。

 2019年度末での日本の政府の債務残高は897兆円でしたが、今の段階で2020年度末には964兆円にも膨らむ見込みです。政府ばかりでなく、地方自治体の債務も増加が予想されます。コロナ対策に加え、東京都ではオリンピック関連の支出も増えるでしょう。地方自治体の債務と合わせると、債務残高の対GDP比は250%近くにまで上昇するのではないでしょうか。

すぐに信用不安が起きる心配はないけれど

 では、かつてのギリシャのような状況が日本でも起きてしまうのでしょうか。新型コロナの感染が収まったら、今度は政府の信用不安が起きるようでは先が思いやられます。

 日本国政府が破たんするというところまで至らないにしても、市場関係者が政府の返済能力に不安を感じるようになると、日本国債が売られ出します。すると、国債の利回りが上昇し、それは融資や住宅ローンなどの他の金利にも影響を及ぼします。景気が悪い中での金利上昇が起きると、さらに景気が冷え込み、新たな恐慌のきっかけになりかねません。

 ただ、今までも信用不安が起きてもおかしくないぐらいの債務残高でしたが、日本国債が暴落することはありませんでした。日本国債のほとんどは日本人が購入しており、日本政府に対する信頼があったからです。

 国際収支統計で見ると、近年は貿易収支の黒字は小さくなっていますが、海外投資から上がる利益が国内に還流しています。日本人は海外で資金を稼いでおり、日本国債を購入する資金は潤沢にあります。当面は、日本国債の暴落や信用不安に陥る心配はありません。

 しかし、将来的にはわかりません。日本人がいつまでも海外で利益を上げられるとは限りませんし、日本人自体が日本政府を見限らないとも限りません。そうなる前に、日本政府は財政の立て直しに着手しなければなりません。コロナの収束後には、そう遠くないうちに消費税の再度の引き上げが議論されることになるでしょう。

(文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー)

村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP・1級FP技能士)、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、証券アナリスト、国際公認投資アナリスト。神奈川大学大学院 経済学研究科卒業。
大和証券に入社し、法人営業、個人営業、投資相談業務に13年間従事する。
ファイナンシャル・プランナーとして独立し、個人の生活設計・資金計画に取り組む。個別相談、講演講師、執筆などで活躍。

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Twitter:@coreca

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