
外出自粛が続くなか、「巣ごもり消費」などという言葉まで生まれ、消費の動向も大きく変わっているようです。他人との接触も少なくなり、家での食事の内容もかわり映えせず、あまり刺激のない生活が続いているのではないでしょうか。
心配なのは、他者とのコミュニケーションの機会が減ることで、ご高齢の方々の認知症が進行してしまうのではないか、また今までは軽度であったり、その兆候が見られなかった方にも影響が及ぶのではないか、ということです。
最新の発表によれば、現在の日本の高齢者人口は3588万人で、これは全人口の28.4%にあたります。そして高齢者に多いとされる認知症患者の数は2012年に462万人だったのが、15年の時点で525万人となり、20年中には600万人を超えることが予想されています。25年には730万人に、30年には830万人になり、2050年には1000万人を超えることになるだろうとまでいわれています。
あまり知られていない事実ですが、日本はOECD加盟国(全37カ国)のなかで、全人口における認知症有病率が2.33%で、もっとも高い国です。ちなみに2位はイタリア、3位はドイツです。OECD全体の平均が1.48%ですから、確かに、それと比べると大きな乖離があると思われます。
今現在でも、ほとんどの介護施設が人材不足に悩んでいますが、経済産業省の試算によると、35年にはなんと約79万人の介護人材が不足するそうです。
国立社会保障・人口問題研究所の調べによると、40年に日本の人口は約1億1000万人になりますが、その時点で1.5人の現役世代(生産年齢人口)が1人の高齢世代を支えるかたちになるのです。
また、経済学者の野口悠紀雄氏の推測によれば、40年には4人に1人が介護・医療従事者という、異常な経済状況になるといいます。日本経済はシュリンクし、社会保障費は膨張を続け、当然のことながら財政は破綻することになるでしょう。
ご承知のように、日本のGDPは世界第3位です。しかし1人当たりGDPになると一気に順位を下げ、世界26位です。どうしてそんなことになってしまうのかといいますと、高齢者が多く実質的な生産年齢人口が少ないからです。今後その傾向に拍車がかかることがわかっています。財政破綻は、もうすでに静かに始まっているのかもしれません。
そこで重要になってくるのが、高齢者がいかに健康な状態を保つことができるか、ということなのです。
認知症は数多くある疾病のうちのひとつにすぎませんが、認知症のことを考え対策を講じることで、ほかの疾病も抑えていくことができると筆者は考えます。これは個人的な問題というよりも、社会全体の問題なのです。そのような認識を持った取り組み方をしなければ、解決の糸口は見出せないでしょう。