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最新の高級マンションでも“騒音”がヒドイ理由…騒音で悩まない&揉めない物件の選び方

文=A4studio
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「Getty Images」より

 いまだ猛威を振るい続ける新型コロナウイルス。その影響で都心部を中心にリモートワークが浸透しつつあり、労働環境の大きな変化が訪れている。実際、多くの企業がリモートワークを導入しており、新たな労働スタイルとしてコロナ禍後にも定着させていこうとする流れもある。だが、在宅時間の増加に伴い、生活音をめぐるトラブルも増えてきているという。

 建材としては信頼度が高く、音も通しづらいとされている鉄筋コンクリート造りのマンションでも、多くの騒音トラブルが報告されているそうだ。そこで今回は、不動産売買および運用、マンション管理組合運営のコンサルティングを手掛け、数多くのマンショントラブルの相談を解決してきた、さくら事務所の土屋輝之氏にマンション騒音事情の実態について話を聞いた。

まず理解しておきたい“騒音の種類”とは?

 騒音問題を語るには音の種類や住居構造など、無数の条件が複雑に絡んでいるということを、まず知ってほしいと土屋氏は語る。 

「音の伝わり方というものには、“空気伝播音”と“躯体伝播音”と呼ばれる2種類があります。まず空気伝播音ですが、これは空気の振動によって伝わる音のこと。日常の生活音でいえばテレビの音声や人の話し声などがこれに当たり、隣の部屋に伝わりやすい音です。一方で躯体伝播音というのは、コンクリートなどの物質を振動させながら伝わっていく音のことで、日常で言えば、上階の住人の足音や、物を落としたときの音など、床や天井などを通して伝わりやすい音とされています。

 とはいえ、必ずしも壁が薄いから空気伝播音が漏れやすい、鉄筋コンクリートだから躯体伝播音が伝わりやすい、というわけではありません。これは極端な例ですが、マンションの躯体を核シェルターのように分厚くした場合その上でダンベルを落としたとして、その音が中にいる人に届くかというと、これは明らかに届き難くなります。理由は単純で、いわゆるコンクリートの躯体が一般的なマンションより格段に分厚いからです。つまり構造が同じでも躯体の厚さといった諸条件が違えば結果も変わるということであり、単純化してその原因を突き止めることはできないということです」(土屋氏)

一般的なマンションとタワマンでは騒音問題が起こる原因も違う?

 では、そうした複雑な条件が交錯する騒音問題に関して、多くの一般的なマンションはどのような対策をしているのだろうか。

「まず意外かもしれませんが、多くの一般的なマンションでは、空気伝播音は比較的問題になる率は低いのです。というのも、実際マンションの騒音問題は上下階や隣室などの生活音が原因であることが多く、床・天井に絡む躯体伝播音となります。

 例えばマンションの床は、鉄筋コンクリートの構造体に直接フローリングを貼っている“直張り”と呼ばれている構造と、構造体の上に空間を設けた“置き床”、または“二重床”と呼ばれている構造の2種類があります。床の構造は、その真下の部屋の天井の構造となるわけですが、その2種類の構造を比べると、一般的に直張りは直接鉄筋コンクリートの構造体に貼っているため音が響きやすく、二重床は床下・天井に空間があるので音が分散され、響きづらいイメージがありますが直張りの遮音性が必ずしも劣るということはありません。

 実際、直張り用の場合にはフローリング材とクッション性のある素材を合わせ、音を吸収する対策を取られています。逆に、二重床の場合は、一見するとその構造自体が防音対策のように感じられますが、鉄筋コンクリートの構造体と接している金属や樹脂製の足部分から、音が伝わってしまうこともあります。ただ、その足部分にゴムのブーツのようなものを履かせるという対策を取ることで、躯体伝播音を和らげています。

 要するに、床の構造問題ひとつとっても複雑で、一概に直張りだから騒音の心配がある、置き床だから騒音の心配はない、といえるわけではありません」(土屋氏)

 では、近代的な住環境であるタワーマンション(タワマン)はどうなのだろう。このコロナ禍でタワマンでの騒音問題の件数も増えたという話も聞くが……。

「リモートワークに伴う在宅時間の増加などが原因で騒音問題の相談件数は増えており、それはタワマンも例外ではありません。ですが、タワマンは値段が高いのに騒音対策がなってないと指摘するのは早計です。タワマンの騒音対策は優れている部分と、指摘が多い部分の両方があるのです。

 まず優れていると思われる部分ですが、これは戸境の壁です。タワマンの戸境壁は旧来のマンションのように、型枠を組んで鉄筋を組み立て、そこにコンクリートを流し固めるようなつくり方はしておらず、工場でつくられた耐火と遮音の性能を備えたパネル(乾式耐火遮音パネル)という壁が使われています。当然、人の話し声やオーディオ機器などの空気伝播音は伝わりづらくなっています。

 次に、躯体伝播音が伝わりやすい床と天井ですが、これに関しては騒音の問い合わせは少々多めかな、という感覚はあります。鉄筋コンクリートの構造体を使う一般的なマンションと違い、タワマンは床・天井の構造体に『ボイドスラブ(中空スラブ)工法』が使われていることも多くなっています。

 これはコンクリートの中に中空部分があるで、厚くしても軽量であるため、タワマンで多く採用されているのです。床スラブを厚くすることで計算上の強度が増し、梁を少なくすることができることから、室内の空間をすっきりさせるというメリットがあるのですが、躯体伝搬音に関しては梁がない分、床の上で振動が起きたときに振幅する面積も大きくなってしまうのです。床が太鼓を叩いた時のようになってしまうイメージで、下の部屋に騒音として伝わってしまうこともあるようです」(土屋氏)

 最先端の高い技術力を駆使して十分な安全性と快適な居住性が確保されたタワマンですが、床・天井に関しては少々音が響きやすいこともあるということか。ただ、これもボイドスラブだから必ず音が伝わるということではなく結局、音が響く直接の原因が判然としないケースも多々あるそうで、日々その原因究明や改善に向けて研究が進んでいるとのことだ。

騒音問題が起こりにくいマンションの選び方、そして居住後の対策

 これらを踏まえて、土屋氏は騒音問題を起こしづらいマンション選びのコツを伝授してくれた。

「まずは躯体伝播音対策がしっかりされているかを確認しましょう。直張り式なのか二重床式なのかというマンションの床の構造を調べ、それぞれの床のタイプに合わせた防音対策がきちんとなされているかをチェックしてみてください。こういった情報は、売り手の不動産業者に聞けばきちんと答えてくれるはずです。空気伝播音に関していえば、往来の激しいエレベーター前の部屋は比較的に騒音問題が起こりやすいので避けたり、騒音問題が比較的起こりにくい角部屋を選んだりといった、そのマンション内の部屋の選び方がポイントとなってくるでしょう」(土屋氏)

 そして最後に土屋氏は、騒音問題における心持ちにこそ、真の重要性があると語ってくれた。

「駅前の騒音の多い場所にあるマンションと、少々駅から距離があり喧騒から離れた場所にあるマンションで構造が同じだった場合、意外かもしれませんが騒音被害の相談が多いのは後者です。これはつまり、どうしても伝わってしまう音を“騒音”として捉えるか否か、という住民の心理状態の話となるわけです。また、選ぶ物件の構造などを知ることも大切ですが、それよりもその音を出している人とどんな関係性を築けているかで、心持ちは激変するでしょう。

 一方、自分が騒音を起こす側にならないようにする対策として、フローリングにカーペットを敷いてみたり、常にスリッパではなくルームシューズを履くようにしたりといったちょっとした配慮が、騒音問題を起こしにくくすると思います」(土屋氏)

 コロナ禍で顕著となったマンションの騒音問題。構造的な問題だけでなく、住民の関係性や心理状態も大きく左右するということのようだ。

(文=A4studio)

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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