「日本のみなさん、無視しないでください。無視が一番つらいです。他人事ではありません」
11月14日土曜日の午後、東京・新宿駅アルタ前広場で呼びかけたのは、在日ベラルーシ人のエレーナ・カジェウニカワさんだ。
“ヨーロッパ最後の独裁国家”とも称されるベラルーシ共和国で、アスリートに対する抑圧が問題になっている。事態を重く見た人々が「ベラルーシ・スポーツ連連帯基金(BSSF)」を設立。その募金活動を新宿駅前で行った。実は、この前日の13日だけでも、ベラルーシ国内で独立労組組合員42名を含む130名が逮捕されている。
今年8月9日、ベラルーシ共和国で大統領選挙が実施されたが、その選挙に不正があったとして、膨大な人々が街頭に出て自然発生的な抗議運動が巻き起こった。
このような巨大デモに対して警察は、ゴム弾による銃撃、実弾の使用、閃光弾、殴打で攻撃し、勾留した人々に拷問を加えていると報じられている。デモが発生して3日間、ベラルーシではインターネットが完全に停止させられていた。だが、ネットが回復してからは、SNSを通じて市民の大規模デモの様子や、警察による暴力の実態が世界に拡散されるようになったのである。
それ以降、現在に至るまで多くの人々が、平和的なデモの権利を主張して闘っている。
オリンピックや世界選手権のメダリストたちを排除
一連の市民への警察の暴力に対し、ベラルーシの1000人以上のスポーツ選手が「暴力と政治的抑圧を見過ごすことはできない」と宣言した公開書簡に署名した。
BSSFの声明文によると、署名の撤回をさせるためにアスリートに対して、スポーツ省があからさまな脅しや厳しい圧力をかけ始めたという。さらに、それでも圧力に負けなかった選手に対しては、不当解雇・不当逮捕・拘置所での拷問など、あらゆる弾圧を行っていると訴える。弾圧を受けているアスリートのなかには、オリンピックや世界選手権で複数のメダルを獲った世界的な選手たちがいる。
抑圧を受けるアスリート支援の募金を行っているFacebook(https://www.facebook.com/donate/847883362703740/)によると、抑圧されているアスリートの一人に、長距離選手ヴォルハ・マズロナックがいる。彼女は 2018年ヨーロッパチャンピオン、複数の国際大会の優勝者、ハーフマラソンの全国記録保持者だ。
公開書簡に署名したあと、彼女の給料は大幅にカットされ、そのため長距離ランナーに必要な高地訓練合宿の機会が奪われているという。その訓練を実施するための募金という意味合いもある。
ほかにも、多くのアスリートが身柄を拘束されている。このような状況のなかで、BSSFが創設されたのだ。BSSFは以下の点を国内外の人々や団体に要請している。
(1)ベラルーシ・オリンピック委員会(NOC RB)との連携の拒否。
(2)ベラルーシ共和国での国際スポーツ大会への参加拒否。
(3)ベラルーシの抑圧されているアスリートへの支持声明の発表。
募金し、握手を求める人も
新宿駅前でのアピール活動には、7~8人の在日ベラルーシ人と、支援する日本人も集まった。マイクもビラもなく、小さなフライヤーを渡すくらい。あまり組織的な活動になれているようにはみえない。
しかし、赤と白の大きな国旗を身にまとったり、日本との連帯を意識してベラルーシ国旗と日本の富士山を合わせた旗を用意するなど、周辺の人々に訴え掛けていた。
すると、立ち止まって話をして募金する人や、千円札を募金して握手をする人も現れ始めた。ベラルーシで多くの人が独裁政権に抑圧されていることはある程度知っていても、アスリートが悲惨な状況になっていることを知る人は、まだ少ない。
(文=林克明/ジャーナリスト)
興味ある人は、下記のFacebookページや募金サイトを参考にしてほしい。
【BSSF FB】https://www.facebook.com/donate/847883362703740/
【BSSF募金】https://bssf-team.web.app/en