「日本の国、まさに天皇を中心にしている神の国」(2000年5月15日、神道政治連盟国会議員懇談会)
「(無党派層は)自民党に投票してくれないだろうから、投票日には寝ていてくれればいいのだが」(2000年6月20日、第42回衆議院選挙・新潟市内での演説)
かつて、上記のような突拍子のない発言で日本国民を唖然とさせ続けてきた“失言王”が、今、改めて世界を唖然とさせている。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長による「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」発言に、驚愕が広がっている。
複数のメディアで報じられているように、海外メディアや有識者も同発言を問題視しているようだ。特にフランスのナタリー・ロワゾー元欧州問題担当大臣がTwitter上で発した森氏への反論はキレッキレだ。以下、ツイートを引用する。
Si, si M. Mori, les femmes peuvent être concises. Par exemple pour vous répondre, deux mots suffisent : « Taisez-vous ». Pour le patron des JO de Tokyo, les femmes ont du mal à être concises… https://t.co/NCaDk1Oxbc
— Nathalie Loiseau (@NathalieLoiseau) February 3, 2021
(はい、森さんであれば女性は簡潔になれます。例えば、あなたに対しては「黙れ」という二つの単語で十分です)
「黙れ」との言葉が、こうした論争の際に適切かどうかは微妙なところだが、ロワゾ―氏の発言に日本のユーザーからも「よく言った」という投稿や賛意を示す「拍手スタンプ」などが相次いでいる。
そもそも森氏は何を言ったのか。3日に開かれた日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で以下のように述べたという。日刊スポーツオンライン版で4日に公開された記事『森会長「私が悪口を言ったと書かれる」/発言全文2』から抜粋引用する。
「これはテレビがあるからやりにくいんだが、女性理事を4割というのは、女性がたくさん入っている理事会、理事会は時間がかかります。これもうちの恥を言います。ラグビー協会は倍の時間がかかる。
女性がいま5人か。女性は競争意識が強い。誰か1人が手を挙げると、自分もやらなきゃいけないと思うんでしょうね、それでみんな発言されるんです。結局、女性はそういう、あまり私が言うと、これはまた悪口を言ったと書かれるが、必ずしも数で増やす場合は、時間も規制しないとなかなか終わらないと困る」
自民党関係者「騒ぎを収めるために責任を取ることになるかも」
デジタル毎日(毎日新聞社)は4日午前10時5分、記事『森喜朗氏、会長辞任の可能性に言及 「女性が…」発言の波紋拡大で』を公開。森氏が辞任の可能性に言及したことを報じたが、事態は急転直下の様相を見せている。自民党若手衆議院議員秘書は次のように語る。
「森喜朗さんが事前に渡された原稿を読まなかった結果と聞いています。正直、愕然としました。森さんは周りの進言をあまり聞かない傾向にあることは有名なので、清和政策研究会(清和会)のメンバーを中心にいつかやらかさないかと、不安視する声もあったのですが、まさかこのタイミングで、女性関係の発言とは。
五輪には政府与党は全力で取り組んでいます。『女性の話が長い』などという不規則発言を長々とするくらいなら、まず、ご自身が短時間かつ簡潔なスピーチを心がけていただきたかった。おそらく国会にも波及するでしょうし、とにかく騒ぎを収めるために、森さんご自身がなんらかの責任はお取りになろうとするかもしれません。
とはいえ、仮に今回の一件で森さんが組織委会長を辞任したら、誰が後任をやるのか。誰も手を挙げたくないと思いますよ。ただでさえ諸外国、政府、官庁との調整など『政治的な押し出しの強さ』が求められる役職です。加えて、この大逆風の局面では並みの人物は乗り切れないでしょう。『もし森会長が辞めるような非常事態が起こったら、安倍晋三前首相を担ぐしかないんじゃないか。組織委会長が誰になるにしろ、表に出て旗を振る役割は安倍前首相しかできない』などと秘書同士の雑談・冗談で話をしていたことが、今更ながらに思い出されます」
森氏が躍起になって発言をするたびに、世論の五輪開催の気運が盛り下がっていくのは皮肉なことだ。いずれにせよ、森氏の失言禄に新たなるページが生まれたことは間違いないようだ。