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なぜ香港投資ファンドは、わざわざ赤字の「カフェ・ベローチェ」運営会社を買収したのか?

文=編集部
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カフェ・ベローチェの店舗(「Wikipedia」より)

カフェ・ベローチェ」を運営する喫茶店チェーンのシャノアール(東京・豊島区)と珈琲館(東京・渋谷区)が4月1日付で合併し、「C-United(シーユナイテッド)」として再出発した。COFFEE(コーヒー)、CREATIVITY(創造力)、CHEMISTRY(化学反応/相乗効果)の3つの言葉の頭文字の「C」に、力を合わせるという意味のUNITEDをつなぎ、新しい社名とした。

 両社は投資ファンド、ロングリーチグループ(香港)傘下に入っており、合併で経営の効率化を進める。新会社の店舗数は約400。スターバックス(1628店)、ドトール(1295店)、コメダ珈琲(873店)、タリーズ(747店)に次いでカフェ業界第5位の規模になる。

 ロングリーチは2020年1月、シャノアールを買収した。シャノアールは1965年の設立。セルフサービス型コーヒーショップ「カフェ・ベローチェ」、フルサービス型カフェ「コーヒーハウス シャノアール」など195店を運営。都心で手ごろな価格でコーヒーを提供する店として知られていた。20年3月期の決算公告によると最終損益は21億円の赤字だった。

 ロングリーチは18年、UCCホールディングスからカフェチェーン珈琲館を買収した。フルサービスの喫茶店チェーンで国内2位の珈琲館は炭火焙煎コーヒーが特徴で、全国に約300店がある。18年12月期の決算公告によると最終損益は6億円の黒字だった。UCCは顧客の目の前でコーヒーを1杯ずつ抽出するサービスを売り物にしている「上島珈琲店」に経営資源を集中する。

 ロングリーチは、どんな活動をしてきたのか。16年、米国系ハンバーガー店「ウェンディーズ」を展開するウェンディーズ・ジャパンが、サントリーホールディングス傘下のファーストキッチン(東京・新宿区)を買収した。その際、ロングリーチグループはファーストキッチンの第三者割当増資を引き受け、筆頭株主になった。

 ロングリーチは05年、日本マクドナルドホールディングスの創業者の藤田田氏の一族から日本マクドナルドの株式を買い取り、マック株式を保有していたことがある。香港・上海のロングリーチグループ・リミテッドと東京の株式会社ロングリーチグループ(東京・千代田区)の2つの拠点を持つ独立系投資ファンドである。

 東京のロングリーチグループの代表取締役兼パートナーの吉沢正道氏は住友銀行出身。ロバートソン・スティーブンスインターナショナル、モルガンスタンレー証券を経て03年、ロングリーチグループを設立した。

スタバとドトールは赤字、コメダは黒字と明暗を分ける

 カフェ業界はコンビニコーヒーの登場で大激震に見舞われた。11年にローソン、12年にファミリーマート、そして13年にセブン-イレブンが100円コーヒーのサービスを開始し、またたく間に大ヒット商品に育った。

 コンビニの100円コーヒーが、コーヒーチェーン専業の再編を加速させた。珈琲館、続いてシャノアールを香港の投資ファンドが買収。東京の高級喫茶店の代名詞だった銀座ルノアールはキーコーヒー(株式保有比率34%)の傘下に入った。キーコーヒーは東証1部に上場しており、イタリアントマトを傘下に持つ。

 新型コロナウイルスの感染拡大がコーヒーチェーンの業績悪化に追い打ちをかけた。あまり影響がなさそうなカフェ・喫茶といった非アルコール業態も外出自粛がモロに響いた。カフェ業界はスターバックスコーヒージャパン(東京・品川区)が一人勝ちの状態だ。1996年に国内1号店をオープン。経営の自由度を担保するために2015年3月、上場を廃止した。

 スタバはチェーン店ながら洗練された店内、おしゃれなメニュー、欧風のオープンテラスの併設などが女性客に支持され、日本のカフェブームのきっかけをつくった。氷菓飲料「フラペチーノ」はスタバの顏だ。11年3月末に912店だったスタバの店舗数は、足元では1628店(20年12月末時点)と1.8倍になった。コロナ前に掲げた「21年末までに1700店」という目標は取り下げていない。

 26期決算公告(19年10月~20年9月)によると、売上高は前期比14%減の1738億円、営業利益は95%減の8億円、最終損益は19億円の赤字(その前の期は128億円の黒字)となった。コロナによる休業費用として61億円の特別損失を計上したため最終赤字になったとみられている。

 ドトールコーヒーなどのドトール・日レスホールディングス(東証1部)の21年2月期の連結決算の売上高は前期比27%減の961億円、営業損益は43億円の赤字(前期は102億円の黒字)、最終損益は109億円の赤字(同60億円の黒字)になった。新型コロナウイルス感染の「第3波」や首都圏を中心とした緊急事態宣言で、売り上げが当初の想定より落ち込んだ。店舗の収益性を見直し、店舗の除却損を特別損失(34億円)として計上した。

 コメダ珈琲店のコメダホールディングス(東証1部)の21年2月期の連結決算(国際会計基準)は売上高に当たる売上収益は前期比7.6%減の288億円、営業利益は30%減の55億円、純利益は33%減の35.9億円となり、きちんと黒字を守った。

 黒字のコメダ、赤字のスタバとドトールと明暗を分けたのは、出店の立地の差である。スタバやドトールは駅前や繁華街に多数出店している。緊急事態宣言による休業や在宅ワークの普及に伴い、駅前や繁華街の流動人口が減少し、その影響をモロに受けた。

 コメダは中部地区を営業拠点とし、郊外やロードサイドに出店している。名古屋名物の「モーニング」を武器に朝や昼の時間帯の集客力が高く、業績の落ち込みを小さくした。
(文=編集部)

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