【確認】「東芝が非上場」ではなぜダメなのか?「有名企業なら上場すべき」の価値観の歴史を考えるの画像1
東芝が投資ファンドの買収&株式非公開化提案で揺れている。現代日本では「上場企業=優良巨大企業」というイメージが強いが、そもそもなぜ「上場は善、非上場は悪」という価値観が生まれたのだろうか?(写真はGetty Imagesより)

「非上場? トンでもない!」という価値観はどこから来ているのか?

 東芝が投資ファンドの買収&株式非公開化提案で揺れている。経営陣の混乱や買収提案の中身についてはすでにいろいろと書かれているので、ここでは株式非公開化、すなわち株式の上場・非上場について考えてみよう。

 報道では「せっかく上場に復帰したのに!」といった、非上場になることについて否定的な東芝役員・従業員の声が紹介されていた。現代日本では「上場企業=優良巨大企業」というイメージが強い。上場企業がみずから非上場になることはほぼないので、非上場になることは「上場廃止=不祥事」を意味している。

 しかし、欧米では、上場企業が上場していることのデメリット、換言するなら非上場のメリットを考えて非上場に転換することは珍しいことではない。珍しいことではないから、外国の投資ファンドが勧めているのであって、別に東芝を貶めようとしているわけではない。

戦前の財閥系企業ではまったく珍しくなかった「非上場の巨大企業」

 戦前の日本では、巨大企業が非上場というのは珍しくなかった。なぜなら、巨大企業を傘下に収める財閥にとって、傘下企業の株式を公開する(=株式市場に上場する)ことはメリットが薄かったからだ。

 財閥家族が持株会社である財閥本社の株式の過半数を所有し、財閥本社が傘下企業の株式の過半数を所有して支配を貫徹するというロジックは学校で習ったことがあると思う。支配も重要なのだが、その傘下企業が生み出す利益の行方も重要である。利益は株式に対する配当として、財閥本社に吸い上げられ、それが財閥本社の利益、つまりは財閥本社の株式の配当として、財閥家族に還流していくのだ。

 日本最大・三井財閥の三井家が日本でもっとも大金持ちだったのは、三井物産などが莫大な利益を上げていたからだ。三井家としては、三井物産の株式は全株持っていたほうがいい。

 ところが、日本が第二次世界大戦に突入し、軍需産業(もしくはその関連企業)を巨大化させる過程で、財閥家族だけの資産でその資金をまかなうことができなくなっていった。財閥系企業も株式を公開し、資金を調達せざるを得ない状況に追い込まれたのである。

 かくして、1940年、三井物産は株式を公開し、上場企業となった(そこには三井財閥の個別の事情があるのだが、それは割愛する)。実に三井物産創設(1876年)から64年もの月日が経っていた。戦争がなかったら、ずっと非上場のままだったかもしれない。

 ただ、三井財閥軽企業でもサラリーマン経営者のなかには、日本を代表するような大企業は社会の公器であるという考えから、金融系の企業は上場が進んでいた。財閥のトップが開明的だった三菱財閥では、三菱商事、三菱重工業、そして財閥本社の三菱本社も株式上場を進めていた。

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