
“政治家だけが悪いのか”
衆議院東京9区(練馬区の一部)選出の菅原一秀・前経済産業大臣(59、自民党)が大島理森・衆議院議長宛てに議員辞職願を提出した6月1日、自民党の二階俊博幹事長が記者会見で次のように述べた。
「ずいぶん政治とカネの問題はきれいになってきている。このことはマスコミも一般国民のみなさんも評価していただいてしかるべきことだ」
(2021年6月2日付『朝日新聞』より)。
問題の菅原氏は、自身の選挙区の有権者に対してメロンやカニなどを贈り、有力な支援者には祝儀や会費、香典などの名目で現金を繰り返し寄付した公職選挙法違反(選挙区内での寄付の禁止)の容疑で略式起訴されることが確実になったことを受け、議員辞職願を提出していた。菅原氏本人も同法違反を認めており(写真は同日に菅原氏が公表した「ご報告」)、起訴されれば有罪を逃れることがまったく不可能な情勢だった。つまり、自ら辞めなくても国会議員の職を失うのは時間の問題だった。
ちなみに、選挙区内での寄付行為を禁止している公選法違反の罪が確定すると、罰金刑の他、公民権が最大で5年間停止され、その間は衆院選に限らず、すべての選挙に立候補できなくなる。
ところで、二階氏が語ったとされる「評価していただいてしかるべき」という日本語は、我々政治家が努力してきた結果、政治とカネの問題はきれいになってきていることを、
・国民は評価していただくべき
・国民は評価していただくのが相応
・国民は評価していただくのが当然である
・国民は評価していただくのが当たり前だ
という意味になるのだろう。それにしても変な日本語だ。「していただく」という謙譲語に、命令調の「べき」という助動詞が付いているので、エラそうに聞こえる上に不遜でさえある。いい印象が全然ないので、お勧めできない用法だ。へりくだった物言いと、上から目線の物言いが混在しているため、日本語としてバランスが大変悪い。後を絶たない「政治とカネ」問題に対し、二階氏は、政治家本人だけでなく、マスコミや有権者の責任はどうなっているのだ――と問いかけたのだと理解することにしたい。
東京9区の選挙は「鍋釜合戦」なのか
衆議院東京9区は、筆者が現在住んでいる地域でもある。菅原氏は、その東京9区から立候補し、復活当選も含め、6選を果たしていた。だが東京9区は、決して「自民党の牙城」と呼べるような地域ではない。菅原氏は2000年と2009年の衆院選で、当時の民主党候補に敗れている。だからメロンやカニやカネを配ったのだろうか――と、考えていると、なんだか東京9区の選挙が「洗剤やビール券やプロ野球の観戦チケットをエサに釣る新聞購読者争奪戦」(昔は「鍋釜合戦」とも呼ばれた)と大差ないように思えてきた。