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五輪、尾身会長「普通はない」発言を検証…自民党、言葉を切り取り&曲解して批判展開か

文=編集部
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3日の参議院厚生労働委員会で答弁する尾身茂氏(参議院インターネット審議中継より

 本当に発言内容を把握した上での発言だったのだろうか――。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会尾身茂会長が3日、参議院厚生労働委員会で述べた東京オリンピックをめぐる「普通はない」発言に対し、「自民党幹部が『言葉が過ぎる』と反発した」との報道が物議を醸している。“圧力”とも取れる党幹部の発言に、インターネット上では政府与党に対する批判が相次いでいる。一方で党内には、同幹部の発言内容に違和感を訴える声も聞かれた。

尾身氏の答弁内容と一致しないチグハグな談話

 朝日新聞デジタルは3日、記事『尾身氏「普通はない」発言、自民幹部反発「言葉過ぎる」』を配信。尾身会長が「パンデミックの所でやるのは普通ではない」と発言したことに触れ、「一方、自民幹部は『ちょっと言葉が過ぎる。(尾身氏は)それ(開催)を決める立場にない』とし、『(首相は五輪を)やると言っている。それ以上でも以下でもない』と不快感をにじませた」と報じた。時事通信や毎日新聞など報道各社も、自民党幹部の談話としてほぼ同内容で報道している。

 一方で自民党参議院議員秘書は、この自民党幹部の談話に関して次のように首をかしげる。

「厚生労働委員会の尾身氏の答弁を聞いていた、あるいは速記録・議事録を読んだとは思えないコメントで、違和感があります。首相が『五輪をやる』と言っているのは周知の通りです。党としてそれで合意に達しているので、談話の内容が誤りだとは言いませんが、尾身氏の一連の答弁への談話としてはチグハグというか。

 オリンピック開催の是非について、3日の委員会で尾身氏は何度も『自分たちにその判断はできない』と何度も答弁しています。党幹部とはいえ、その日の国会審議をすべて把握するのは無理ですし、受け取り方、感じ方は先生ごとに千差万別なので難しいところですが……」

尾身氏「五輪開催の是非の判断はできない」

 3日の参議院厚生労働委員会のやり取りはどのようなものだったのか。立憲民主党の打越さく良氏(新潟県選挙区)から複数回にわたり「五輪開催の是非」に関する見解を問われ、尾身氏は以下のように重ねて答弁していた。

「アドバイザリーボードあるいは分科会で、オリンピックを開くかどうかということを我々が判断するということは、私はそういう立場にもないし、そういう権限もないし、それについては判断をする立場にはない」(発言内容ママ、以下同)

「オリパラを開催すべきかどうかというのは、我々はそうしたことを判断する権限もないし、それに何かあった時に対して責任もとることはできません。我々は政府に対していろんなアドバイスするのであって、IOC(国際オリンピック委員会)にアドバイスする立場にはない」

 そのうえで、「オリンピックを開催すれば、国内の感染(状況)、医療のひっ迫になんらかの影響を及ぼしますから、国、組織委員会(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会)が(開催を)決定した場合には、感染のリスク、医療ひっ迫の評価をするのは我々の責任だと思います」と述べ、五輪開催時のリスク評価を分科会として打ち出すことを表明した。

 さらに「オリンピック関係者と政府、政府の方にはこれから重要な時期になりますから、ワクチンや検査などテクノロジーを使った今まで以上の強い対策が必要」などと述べ、「本来は、パンデミックの所でやるのは普通ではない。やろうとするのなら、かなり厳しい責任をオリンピック委員会や政府が負って、強い覚悟でやってもらう必要がある」と答弁した。

 ちなみに尾身氏は2日の衆議院厚生労働委員会では、「人々の努力だけに頼るという時期はもう過ぎた」としたうえで、政府とIOCの連携やITテクノロジーの最大限活用などを訴え、以下のように語っている。

「これはオリンピック組織委員会の人たちが是非やっていただきたいことですけれども、オリパラをもしやるのであれば、その規模をなるべく最小化して、それから管理体制をできるだけ強くする。

 こういう、人々の、国の自治体の努力、それからサイエンスとテクノロジーの最大の活用と、それから、オリンピックをオーガナイズする人たちの責任としては、これはなるべく今の状況でやるというのは普通はないわけですよね。このパンデミックで。そういう状況の中でやるということであれば、オーガナイザーの責任として、開催の規模をできるだけ小さくして管理の体制をできるだけ強化するというのは、私は、オリンピックを主催する人の義務だと。そういう意味で三位一体の努力が必要だと思います」

浮足立つ官邸と自民党上層部

 尾身氏は“東京五輪開催の判断・是非”に関しては、あくまで「政府の分科会」の代表者として慎重に発言していたように見える。では、報道にある自民党幹部の「ちょっと言葉が過ぎる。(尾身氏は)それ(開催)を決める立場にない」「(首相は五輪を)やると言っている。それ以上でも以下でもない」とのコメントは尾身氏のどの発言に対して発せられたものなのか。報道陣の聞き方が悪かったのか、それとも「言葉が過ぎていた」のは自民党幹部なのか。

 4日、一連の尾身氏の発言の受け止めを報道陣に問われた丸川珠代五輪相は「我々はスポーツが持つ力を信じて今までやってきた。別の地平から見てきた言葉をそのまま言ってもなかなか通じづらいというのが私の実感でもある」などと語り、火に油を注ぐ結果になっている。

 一連の騒動について自民党衆議院秘書は「官邸スタッフと党上層部が浮足立っているの気がします」と困惑する。東京五輪をめぐる政府・与党の混迷は深まるばかりだ。

(文=編集部)

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