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キャリア官僚の志望者が激減…人手不足の“ブラック霞が関”を待つ沈没の危機と回避策とは

文=清談社
キャリア官僚の志望者が激減…人手不足のブラック霞が関を待つ沈没の危機と回避策とはの画像1
霞が関一丁目交差点(「Wikipedia」より)

 過労死ラインとされる月80時間を優に超える残業は当たり前、予測不能な国会対応などでテレワークは一向に進まない……。今、霞が関で働く官僚の多くは過重労働を強いられ、離職者の数は増加の一途をたどっているという。

 そんな中、元キャリア官僚の視点から、霞が関で常態化している過酷な労働の実態や構造的な問題を炙り出した『ブラック霞が関』(新潮社)が話題を集めている。著者の千正康裕氏に、本書に込めた思いや官僚の働き方が変わっていくために必要なことについてうかがった。

前編はこちら

霞が関の体質が変わらなかった理由

 政治状況が変わり、内閣支持率が選挙結果にダイレクトに結びつくようになった。支持率を常に高く保つために、ある課題が出てきたときに、世の中の関心の高いうちに、世間の空気を読んで官邸主導で重要な政策決定がなされるようになった結果、霞が関の官僚は無理なスケジュールでの制度設計を強いられることが増えていった。

「政治状況が大きく変わって、迅速な対応が取られるようになったことは素晴らしいのですが、世の中の関心が高まっているうちに政策を打ち出すのであれば、それに追いつけるようなマンパワーが必要です」(千正氏)

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『ブラック霞が関』(新潮社/千正康裕)

 官僚の働き方を変えるためには、どのようなアプローチが求められるのだろうか。

「現在の霞が関が抱える問題を世間に広く認知してもらい、改革の必要性を理解してもらうことが大切です。2020年9月に河野太郎さんが国家公務員制度担当大臣に就任し、『霞が関のブラックな状況をホワイト化していく』と表明しましたよね。

 ちょうど、その後、僕の『ブラック霞が関』も出版されたのですが、この問題に関する報道が増え、官僚の過酷な労働実態が少しずつ知られるようになり、実際にサービス残業をやめて残業代を適正に支給するよう指示が出されるなど、改善も見られています。国会も質問通告がいくらか早くなったり、政党の会議がペーパーレスになったり、ウェブ会議で官僚の説明を受けたり、できることから改善が始まっています。

 もし、官僚の仕事に対して世間が『公務員だから“9時5時”で楽な仕事でしょう』という誤った古いイメージを持ったままであれば、権限のある政治家が変えようと働きかけても、世間からの支持は得られなかったはず。官僚の給料の原資は税金ですからね」(同)

 千正氏は「霞が関に人材が集まらなくなり、組織の力が落ちていくと、政策の質が落ちたりミスが増えたりして国民に迷惑がかかる」という思いから、官僚の働き方を変えるための活動を始めた。

「政治家が悪いという人もいますが、彼らは個人の趣味で意思決定をしているわけではなく、常に世論を気にしています。(1)世間が『霞が関や永田町を変えていくべきだ』という声を上げること、(2)権限のある人が、その声を受けて変革のために動くこと。あらゆる政策の変更と同様に、官僚の働き方を変えるためには、この2つのステップが必要なのです」(同)

『ブラック霞が関』 朝七時、仕事開始。二七時二〇分、退庁。ブラック労働は今や霞が関の標準だ。相次ぐ休職や退職、採用難が官僚たちをさらに追いつめる。国会対応のための不毛な残業、乱立する会議、煩雑な手続き、旧態依然の「紙文化」…この負のスパイラルを止めなければ、最終的に被害を受けるのは国家、国民だ。官僚が本当に能力を発揮できるようにするにはどうすればいいのか。元厚生労働省キャリアが具体策を提言する。 amazon_associate_logo.jpg

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