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自民党総裁選の陰でうごめく台湾…「高市早苗・蔡英文ウェブ対談」の違和感

文=深田萌絵/ITビジネスアナリスト
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「Getty Images」より

 メディアは自民党総裁選の話題で賑わっている。テレビなどの大手メディアだけでなく、SNSなどインターネット上のメディアも総裁選一色だ。

 男性2人、女性2人の総裁候補で、もっとも政策の出来栄えの良い高市早苗候補が、当初の泡沫候補扱いから猛追して、今や2位の岸田文雄候補を抜かんとするばかりの勢い。

 そんななかで、ひとつ違和感を抱いたのが「高市早苗蔡英文ウェブ対談」のニュースである。蔡英文氏は台湾の民進党主席で総統だが、今回は台湾総統という肩書を外し「民進党主席」の立場で高市氏とウェブ対談を行うかたちをとり、外交上の配慮がなされている。

 ところが、これに一部の米政府関係者が首をかしげている。「総統」の肩書を外す配慮をしたとはいえ、事実上、日本の首相を決める選挙に、外国の首脳が応援を行っているわけだ。たとえば、他の候補が「個人として習近平と対談を行った」としたら、世論はどういう反応を示すだろうか。

 高市氏は政策、討論、質疑応答ともに申し分ない能力を発揮されてきたにもかかわらず、大事なところで「逆の立場からどう見えるか」という客観性を欠いたといえるだろう。今回の総裁選の見どころは、高市氏のネット戦略にある。

 2016年が「データドリブン型選挙の幕開け」であると、拙著『米中AI戦争の真実』(扶桑社)において紹介した。それが自民党の総裁選や党内の派閥争いで見られるとは予見していなかった。

 河野太郎候補は、それまで広告代理店を利用してウェブ対策にかなり力を入れてきたとみられるが、ツイッター上で河野氏をやたら持ち上げるアカウントがあったり、彼のYouTubeも面白くもないのに数十万回も再生されたりしてきた。印象としては、反対陣営を罵って回る維新のネット対策とは異なり、比較的王道のネット対策だ。

高市陣営のネット対策

 一方、高市陣営のネット対策は見事だった。

 そもそも、政策のマーケティングがしっかりしており、保守派へのアプローチに申し分のない出来栄えである。そして、初期には主流保守派メディアでの有名人を中心にブランディングを行い、そこからウィングを中間層へと広げていく過程で文言を調整していき、「右翼」というイメージから「思ったより極右でもない」へとイメージ転換を遂げた。そして最終的には、40代、50代の中間から中道右派にもリーチできるように著名人とのコラボ動画の配信を行い、「政治家なのにお茶目」というイメージアップも図った。

 その一方で、ネット対策でのミスも見られる。

 反対陣営を罵って回る「維新風」のネット対策もあり、かなりの人数が煽られたとようだ。そしてよく見たら、他候補を罵倒するチームに、維新のネット対策チームである通称「維新ジャー」がチラホラ観察された。

 筆者が3年ほどモニタリングしてきたところ、維新ジャーは広告代理店が運営するネット世論対策チームであり、日本語が堪能な中国人や台湾人も複数見られる。

 普段の選挙では、選挙区内の自民党候補を罵倒して回っているのだが、今回は高市氏を応援し、他の候補を罵倒して回っている様子が見られた。反対陣営を罵倒して回ると高市ファンは喜ぶが、中間層が引き気味になる。さすがに高市氏もまずいと思ったのか、「他候補への誹謗中傷や恫喝や脅迫によって確保される高市支持など私は要りません」との声明を発表するに至ったというわけである。

 今回、筆者が関心を持ったのは、河野氏の親族が経営する会社である日本端子が、中国大手ディスプレイ企業「京東方(BOE)」と合弁会社をつくるなど、深い関係があるという点である。これがネットで批判を浴びる原因となった。

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