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ネット情報を鵜呑みにする高齢者たち…駆使してるつもりが振り回され、消費者被害が激増

文=林美保子/フリーライター
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「Getty Images」より

 70代後半の知人によると、同年代にはパソコンもスマホもやらないという人が半分くらいいるという。60代になると、ほとんどのオフィスワーク経験者はパソコンを使うようになっている。

 パソコンやスマホに慣れてくると、自分はインターネットを使いこなしていると思いがちだ。しかし、生まれたときからネットが身近にあったデジタルネイティブとは違い、シニア世代はネット教育を受けてこなかったため、ネットリテラシー(インターネットを使いこなす能力)が低いという弱点がある。

デマ情報に振り回される

 6月末、私のもとに親族の女性から電話がかかってきて、新型コロナウイルスのワクチン接種を見直すようにという説得が始まった。

「今のワクチンというのは、遺伝子の組み換えによってつくられているから、接種することによって、体内の遺伝子が組み換えられてしまい、将来体の異変が起きる可能性があるそうよ」

「それは、どこの情報ですか?」

「YouTubeよ。リュック・モンタニエというノーベル賞学者が言っているんだから」

と、ノーベル賞学者の名前を出して、信憑性があることを強調する。私には荒唐無稽な話に思えたが、調べてみると、確かに遺伝子組み換え情報、不妊リスクなどのワクチンに関する情報はSNSを中心に世界規模で広がっていた。リュック・モンタニエに関しては、本人の発言が捻じ曲げられて、「ワクチン接種を受けた人は2年以内に死ぬ」と発言したというデマまでも一部流れたらしい。しかし、信頼できる筋でしっかり調べれば、デマだということはわかる。

 親族の女性はそれまで、あまりインターネットを利用していなかった。このような、にわかネット利用者はネット情報を鵜呑みにしてしまう傾向がある。

フィルターバブルから抜け出せなくなる

 2年前、私は弁護士大量懲戒請求事件の裁判を数回傍聴した。この事件は、在日朝鮮人・韓国人などに関するヘイトスピーチで知られ、ネトウヨ(ネット右翼)に人気のあるブログ主の呼びかけによって、数百人ものフォロワーが弁護士会宛に弁護士の大量懲戒請求を送りつけたという事件である。

 懲戒請求のターゲットになったのは、ブログ主が反日派だと決めつけた弁護士たちだった。その請求事由が荒唐無稽だったり、弁護士には身に覚えのない内容だったりしたにもかかわらず、数百人ものフォロワーたちがブログ主の主張を信じて、各弁護士に数百通から数千通というおびただしい数の懲戒請求書を送りつけたものだった。

 2018年、ターゲットにされた弁護士たちが、フォロワーたちを相手に損害賠償請求裁判を起こした。弁護士が裁判に出席して驚いたのは、被告人も傍聴人も高齢者ばかりだったことだ。ネトウヨには若者が多いといわれているが、彼らはネットに慣れているため、情報を取捨選択する判断力があり、ブログ主の呼びかけには簡単に同調しないのだろう。

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