コロナ禍でどのようなアプリが成長しているのだろうか。この時期のアプリの成長には、コロナ禍が大きく影響しているようだ。アップアニーが発表した2020年の世界各国におけるアプリダウンロード数から分析していこう。
コロナ禍でヒットを飛ばしたTikTokが一位
2020年の世界のアプリダウンロード数を調べたところ、TikTokが第1位となり、続いてFacebook、WhatsApp、Instagram、Facebook Messengerとなった。2019年時点での世界で最もダウンロードされたアプリは、1位からFacebook Messenger、Facebook、WhatsApp、TikTok、Instagramだったため、この1年でTikTokが躍進したことがわかる。
日本でもコロナ禍で、TikTokは「#休校チャレンジ」「#プランクチャレンジ」など、さまざまな流行を生み出していた。ローティーン中心から徐々に上の年齢層にまで流行が広がっていき、多くのユーザーが使うようになっている。
しかし、TikTokにとって2020年はむしろ危機的状況だったことを覚えているだろうか。8月にトランプ大統領が米国におけるTikTok、WeChatの新規ダウンロードを禁止、バイトダンス社に対してTikTokの米国事業売却を迫ったのだ。2021年6月にバイデン大統領により撤回され配信再開となっているが、インドではTikTokなど中国製の59アプリは禁止されたままだ。
なお、2020年の世界におけるランキングは以下の通りだ。2〜5位まではFacebook社のアプリが続いている。
1位 TikTok(中国/ショート動画アプリ)
2位 Facebook(米/ソーシャルメディア)
3位 WhatsApp(米/メッセージアプリ)
4位 Instagram(米/ソーシャルメディア)
5位 Facebook Messenger(米/メッセージアプリ)
6位 Snapchat(米/ソーシャルメディア)
7位 テレグラム(露/メッセージアプリ)
8位 Likee(中国/ショート動画アプリ)
9位 Pinterest(米/ソーシャルメディア)
10位 Twitter(米/ソーシャルメディア)
テレグラムもSnapchatも一定時間で投稿が消える点が共通しており、プライバシーを考えて消えることが重視されたと思われる。テレグラムは、反体制デモのあった香港やタイで、当局による監視の目から逃れたい学生を中心に利用が広がったという。
SNSで募集された闇バイトからの強盗事件のうち、警視庁捜査1課が2019年以降に摘発した強盗事件の95%超で、犯行グループがテレグラムを使っていたことがわかっており、日本では違法な事件での利用が目立っている。
マッチングアプリや音声コミュニケーションも人気に
一方、日本における2020年のアプリダウンロードランキングは以下の通りだ。
1位 LINE
2位 Instagram
3位 TikTok
4位 Twitter
5位 Pinterest
6位 Facebook
7位 TownWi-Fi by GMO
8位 Pairs
9位 Discord
10位 Yahoo Mail
LINEが前年の2位からトップになり、日本におけるLINEの圧倒的人気が感じられる。ただし、中国の業務委託先から国内の個人情報を閲覧できる状態となっていたことが発覚して自治体における利用停止が進むなど、データ管理管理不備が課題となっている。なお、TownWi-Fi by GMOは街中のフリーWi-Fiに自動で接続するアプリであり、パケットを節約したいユーザーが少なくなかったことがわかる。
コロナ禍で出会いが減ったなかで、Pairsなどのマッチングアプリの需要は増加した。大学生以上の20代、30代などに特に人気となり、利用が一般化しているのだ。新型コロナの感染拡大を受け、20年4月にはビデオ通話でデートができる機能が追加されており、オンラインデートなどの利用も進んだようだ。
Discordは日本で9位、米国でも7位に入った。2020年初に人気となったClubhouseと同様、音声でコミュニケーションできるアプリだ。もともとゲームと相性が良いと人気だったが、こちらもコロナ禍で外出しづらい中で音声コミュニケーションできるアプリとして人気が出たと考えられる。
「ショート動画アプリ」動向に要注目
なお、ネット規制で多くの海外製アプリが利用できない中国では、Douyin(中国版TikTok)他、WeChat、QQ、WeShow、RED(中国版Instagram)、Weibo(中国版Twitter)などの国産アプリがランキング上位を占めている。
また米国では、規制対象となっていたTikTokが昨年の2位から1位に。続いてFacebook Messenger、Facebook、Instagram、Snapchat、WhatsApp、Discord、Pinterest、Twitter、Google Duoとなっている。Google Duoはビデオ通話アプリであり、ここでもコミュニケーションアプリが入っている。
なお、アップアニーいわく、「米国や英国でTikTokの合計視聴時間がYouTubeより長くなっており、引き続きショート動画に要注目」という。
筆者が数年前に学生にインタビューした時点では、TikTok人気はローティーンを中心としたものだった。しかしコロナ禍でユーザーの年齢層が上がってきている。日本ではまだまだInstagramの人気が強いが、コロナ禍でリアルタイムコミュニケーションアプリが人気となる傾向は見逃せないだろう。
2021年のキーワードはショート動画アプリ、そしてリアルタイムコミュニケーションと言えるだろう。コロナ禍が続く中、この傾向ももうしばらく続くかもしれない。世界、日本の動向に要注目だ。