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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

フラット35、完済総額が実質300万円も軽減?子育て世帯、住宅購入のチャンス

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
フラット35、完済総額が実質300万円も軽減?子育て世帯、住宅購入のチャンスの画像1
「gettyimages」より

 2022年4月から、【フラット35】の制度変更が実施されます。子育て世帯は金利引下げ期間が延長されて、4000万円借り入れたときの完済までの総額では200万円近く軽減されます。あわせて「こどもみらい住宅支援事業」の補助金を利用すればダブルメリットで格段に購入しやすくなります。子育て世帯はマイホーム購入のチャンスのときです。

全期間固定金利型でリスクがない【フラット35】

【フラット35】というのは、独立行政法人の住宅金融支援機構が民間機関と提携して実施している住宅ローンです。住宅金融支援機構はかつての住宅金融公庫の後継機関であり、【フラット35】は半公的な住宅ローンといっていいでしょう。最大の特徴は、完済までの金利が契約時に確定する全期間固定金利型という点です。借入後に市中の金利が上がっても、適用金利が上がることはなく、完成まで返済額が変わらないという安心感があります。

 金利水準は変動金利型などに比べると若干高いのですが、それでも2022年4月の金利は返済期間15年~20年で1.31%、21年~35年で1.44%と1%台の前半で利用できます。しかも、建てては壊す大量消費から、いい住宅を建てて長く大切に使っていくという国の政策を促進するため、良質な住宅などについては金利引下げ制度が適用され、負担が軽減されるようになっています。

引下げ制度の併用で0.50%の金利引下げも

 さまざまな金利引下げ制度のベースとなるのが、【フラット35】Sです。耐震性、耐久性などの4つの条件のうちひとつを満たせば、金利が0.25%引下げられます。よりレベルの高い金利Aプランは引下げ期間が10年で、少し劣るBプランは5年間になります。これに、【フラット35】地域連携型などの他の引下げ制度を組み合わせることができます。積極的な住宅支援制度を行っている都道府県や市区町村と連携、自治体の各種の補助金などを取得した上で、【フラット35】の金利引下げを享受できるという制度です。

 図表1にある7つの政策を実施している自治体で住宅を取得することが条件になります。どの自治体が実施しているのかは、住宅金融支援機構のホームページで確認できます。

 たとえば、横浜市のエコリノベーション補助制度では、1戸当たり最大120万円の補助金が出ます。それを利用した上で金利引下げが適用されるわけです。しかも、これと【フラット35】Sを組み合わせることができるのです。金利引下げ幅は【フラット35】Sの0.25%、【フラット35】地域連携型の0.25%を合わせた0.50%になるのですから、メリットが格段に大きくなります。

図表1 【フラット35】地域連携型を利用できる事業

・子育て世帯が住宅を取得する場合

・UIJターンを契機として、住宅を取得する場合

・居住誘導区域外から居住誘導区域内に移住する歳に住宅を取得する場合

・地域木材を使用した住宅を取得する場合

・空き家を取得する場合

・防災・減災対策に資する住宅を取得する場合

・街なみ景観の形成に資する住宅を取得する場合

(資料:住宅金融支援機構ホームページ)

2021年度_フラット35_地域連携型_二つ折りチラシ_210921ol_入稿_just (flat35.com)

引下げ期間の延長で総返済額は97万円減少

 この【フラット35】、この4月からはふたつの制度改訂が行われます。ひとつは、【フラット35】維持保全型のスタート。図表2にあるように、長期優良住宅など維持保全に配慮された住宅を取得すれば、当初5年間金利が0.25%引下げられます。

 2つ目として、【フラット35】地域連携型の子育て支援タイプの金利引下げ期間が10年間に延長されます。金利引下げ幅の0.25%は変わりませんが、それが10年間に延長されるのですから、メリットが倍増します。借入額4000万円で、35年元利均等・ボーナス返済なしの場合、通常の【フラット35】だと、毎月返済額は12万1301円で、35年間の総返済額は約5095万円です。それが当初5年間、金利が0.25%引き下げられると、当初5年間の毎月返済額は11万6490円に減って、総返済額額は約5042万円に減少、通常の【フラット35】より、総返済額は53万円少なくなります。

 今回、この金利引下げ期間が10年に延長されることで、毎月返済額が11万円台に減る期間が伸びて、結果的に総返済額は約4998万円と5000万円を切ります。通常の【フラット35】より、総返済額が97万円も減る計算です。

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【フラット35】2022年度4月以降の制度変更事項のお知らせ:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】 (flat35.com)

完済までの総額で200万円近くもの軽減に

 この【フラット35】地域連携型の子育て支援と、先の【フラット35】Sの金利Aプランを組み合わせると、金利引下げ幅は0.25%+0.25%の0.50%となり、その0.50%の金利引下げ期間が10年間続くことになります。そうなると、やはり借入額4000万円のケースでみると、当初10年間の毎月返済額は11万1779円に減って、11年目からの返済額は11万8659円となり、35年間の総返済額は約4901万円です。

 金利引下げが適用されない通常の【フラット35】だと、毎月返済額が12万1301円で、それが35年間続くので、総返済額は約5095万円ですから、子育て支援と金利Aプランの組合せを利用できれば、返済総額を194万円も少なくできます。何と200万円近くもの軽減ですから、子育て世代には極めてメリットが大きくなります。

こどもみらい住宅支援事業で1戸当たり100万円

 さらに、現在は2021年度補正予算による「こどもみらい住宅支援事業」が実施されています。これは、子育て支援と2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、子育て世帯や若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や住宅の省エネ改修に対して補助する制度です。子育て世帯や若者夫婦世帯の住宅取得にともなう負担の軽減を図るとともに、省エネ性能を有する住宅ストックの形成を図ることを目的としています。

 この場合の子育て世帯の定義は18歳未満の子どもがある世帯であり、若者夫婦世帯は、夫婦のいずれかが39歳以下の夫婦になります。その場合、図表3にあるように、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は1戸当たり100万円の補助で、ZEHには至らないものの、高い省エネ性能を有する住宅が80万円、省エネ性能基準に適合する住宅が60万円となっています。

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kodomo-mirai_outline.pdf (mlit.go.jp)

こどもみらい住宅支援事業は22年10月まで

 先にみたように、子育て世帯であれば、【フラット35】の金利引下げ制度で200万円近く負担が軽減される上に、この補助金100万円が加わって、実質的に300万円近く得する計算です。

 ただ、この「こどもみらい住宅支援事業」は22年10月末までに契約して着工する必要があります。補正予算による時限措置ですから、予算枠である542億円に到達すれば、それ以前に締め切られる可能性もあるので、早めに行動を起こす必要があります。

 子育て世帯にとって、この2022年春から夏にかけては、住宅ローンを組んでマイホームを取得する大きなチャンスのときです。「いずれマイホーム」と考えている人は、少し前倒しで動き始めたほうがいいのではないでしょうか。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


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