一世帯の金融資産額、初の平均2千万円台に?「評価額の増加」が「収入増」を逆転
知るぽると(金融広報中央委員会)が毎年公表している「家計の金融行動に関する世論調査」の2021年版は、新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより、調査年ではなく今年2月14日に公表されました。執筆時点では、クロス集計が公表されていないことから同統計を取り上げたメディアはほぼ皆無です。
今回の調査から、2人以上世帯については調査方法が従来の「訪問と郵送の複合・選択方式」から「インターネットモニター調査法」に変更されました。単身世帯調査は従来通り「インターネットモニター調査」で変わっていません。
家計が保有する金融資産額は、2人以上世帯の平均値が1563万円、中央値が450万円です。意外と少ないと思われた人もいるかもしれませんが、この数字は金融資産非保有世帯(全体の22%)を含んでいるためです。金融資産を保有している世帯に限ると、平均額は2024万円と初の2000万円台乗せ、中央値は800万円となっています。
単身世帯では平均額が1062万円、中央値が100万円、金融資産を保有している世帯だけの平均値は1614万円、中央値は500万円となっています。2人以上世帯、単身世帯ともに株式や債券などの価格上昇による資産効果で家計の金融資産額を大幅に増やしましたが、22年は3カ月を経過した時点では一転して逆資産効果で保有額を大幅に減少させているはずです。残り9カ月でどのくらい挽回でき(場合によってはさらなる減少)、かつ同統計データの結果がどのようになるのか今から興味津々です。
“持つ者と持たざる者の差”が鮮明
今回の調査、「金融資産残高の増加理由」と「金融資産を選択する際に重視すること」の2点が注目です。過去の調査では、「金融資産残高の増加理由」として、2人以上世帯はほぼ全世帯、単身世帯は9割方が「定例的な収入が増加したから」をトップにあげていたのですが、2021年は「株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したから」が1位になったのです。日本でも言われるようになった“持つ者と持たざる者の差”が統計データに明確に出たのです。
また、「金融商品を選択する際に重視すること」のトップが2人以上世帯、単身世帯共に「収益性」となり、「安全性」を逆転しました。2人以上世帯では「安全性」よりも「収益性」が10ポイント以上も高く、筆者の記憶が正しければ「収益性」がトップにたったのは初めてのことです。長年、証券会社を中心に金融業界は「貯蓄から投資へ」、近年は「貯蓄から資産形成へ」という御旗を振り続けてきたにもかかわらず、貯蓄という山はびくともしませんでしたが、山が動く気配が濃厚になってきたようです。
しかも、「元本割れを起こす可能性があるが、収益性の高いと見込まれる金融商品の保有」に関する質問では、2人以上世帯では「そうした商品についても、積極的に保有しようと思っている」が14.5%、「そうした商品についても、一部は保有しようと思っている」が35.1%と合わせて49.6%と半分近くに達したのです。「積極的に保有しようと思っている」は過去10年間の平均で2.5%程度しかなく、「一部は保有しようと思っている」と合わせた数値も過去10年間の平均は20%前後だったため、驚くべき結果といっても過言ではありません。
ちなみに単身世帯では、2人以上世帯ほど際立った変化は見られませんでしたが、それでも元本割れ商品を保有することへの抵抗が減少傾向にあることが見受けられます。統計結果を反映するように貯蓄の山が動くのか、興味津々です。
(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)