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松崎のり子「誰が貯めに金は成る」

火災保険が大幅値上げ、今後も値上がりが不可避か…高リスク地域は高額になる?

文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト
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家とお金(「gettyimages」より)
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 東北や北陸で甚大な水害が起きてしまった8月。豪雨災害を引き起こす線状降水帯は発生予測が難しく、今や日本中どこで起きてもおかしくない。おまけに台風シーズンの本番はこれからだ。自然災害への備えとして、住まいの保険の内容を再確認しておく必要があるだろう。

 折も折、保険会社各社は2022年10月以降に火災保険料の値上げを予定している。その理由のひとつが、まさに甚大な水害の頻発だ。火災保険料の基準となる「保険参考純率」は、損害保険料率算出機構が自然災害の発生リスクに応じて計算している。2019年にも見直しを行い、それに応じて火災保険料の引き上げが行われたが、それには2019年に関東を襲った大型台風19号や2020年の7月豪雨の被害は反映されていない。

 今回の改定はやっとそれを受けてであり、「これまでに経験したことのない」自然災害が毎年繰り返されてきたことを示す。つまりは、保険料を引き上げなくては保険会社がその支払いに対応できないということでもある。この保険参考純率に事業経費などを上乗せして、火災保険契約者が払う保険料を決めるが、11%以上は上がることになりそうだ。

 同時に、契約期間も見直しになる。これまでは10年の長期契約が可能だったのが、今後は最長5年までに短縮される。自然災害の発生規模が年々変化していくため、短期で見直さないと実情と合わなくなってしまうからだ。10年間も災害の規模が変わらないとは思えず、この先も値上げが続く可能性は大いにあるだろう。

水害に備える補償に契約しているのは7割未満

 集中豪雨で住宅が床上浸水の被害に遭ったり、河川の増水や土砂崩れが起きて家屋が流されてしまったという被害を補償するには、「水災補償」が必要だ。しかし、これは火災保険のうち特約になるため、契約者が付帯するかどうかを選ぶことになる。

 ニュースなどで甚大な被害を目の当たりにすると、水災補償の重要さを強く感じるが、2020年度の付帯割合を見ると、全国で66.6%と7割に満たない。しかも、2016年から年々下がってきている(損害保険料率算出機構の資料より。各種共済は含まない)。

 大規模災害の頻発に逆行しているようにも見えるが、近くに海や河川がない、高層階に住んでいる、など必要性を感じないこともあるだろう。また、補償の対象になるのが、床上浸水(床を超える、または地盤面より45cmを超える浸水)あるいは再調達価額(同じ建物を建てるために必要な金額)の30%以上の損害を受けた場合と規定されている契約が多く、そこまでの被害は生じないだろうとの認識もあるかもしれない。

 ただし、近年では集中豪雨により排水が間に合わず、浸水してしまう都市型洪水(内水氾濫など)も起こりうる。2019年の台風19号により、川崎・武蔵小杉のタワマンが浸水被害を受けたことを覚えている人も多いだろう。

 集合住宅の場合は個人の備えだけでは対応しきれないが、都市部だから絶対に大丈夫ということはない。事実、ハザードマップを見ると、近くに川などがない住宅街であっても浸水リスクが想定されている。うちは大丈夫だろうと根拠なく思い込んでしまうことがないようにしたい。なお、上階からの漏水で被害を受けたり、配水管が破裂して部屋が水浸しになったなどの被害は、水災ではなく「水濡れ」の補償対象になる。

 ハザードマップを確認した上で水災補償をつけたいというなら、10月の保険料値上げ前に契約するのがタイミングとしてベターだろう。水災補償を付加したい場合、保険会社によって手続きが異なり、新たな火災保険への加入が必要なこともある。近々契約更新を控えているなら、複数の保険会社で水災補償も含めた見積りを取るのがいいだろう。

 いざ水害に遭ってしまうと、建物だけでなく家具や家電も被害を受け、買い替えとなるとかなりの支出になる。家財の補償も適切につけておきたい。しかし、それで補償が足りるわけではない。

 集中豪雨の被害では、自動車が水没しているニュース映像をよく見る。しかし、自動車やバイクは火災保険の家財には含まれず、たとえ水災の特約をつけていても対象外だ。豪雨や洪水、土砂崩れで車が被害を受けた場合は、自動車保険の車両保険の契約が必要になる。

 保険料の関係で車両保険をつけない人もいるが、車が欠かせないライフラインとなっている地域なら検討もありだろう。ただし、地震による津波で車が被害を受けた場合は対象外だ。最大50万円(車両保険の金額まで)の一時金を受け取れる特約までになる。

水災の保険料は地域ごとに見直す方向か

 今、市区町村ごとの水災リスクに応じて保険料に差をつけるべきとの検討が行われている。これまで損保会社各社は水災については全国一律の保険料率を採用してきた。そのため、契約の際に水害リスクとの兼ね合いで水災補償をつけない家庭も多く、たとえ被害を受けてもむろん保険金は受け取れない。ネックは一律の料金設定が高いと感じるからであり、リスクが小さい家庭にも契約を促すには水災補償料率を居住地域ごとに差をつける必要があるのでは、との議論からだ。

 金融庁の「火災保険水災料率に関する有識者懇談会」によれば、保険料格差には保険料が高い=リスクも高いとの認識を高める効果がある反面、保険料を細かく設定しすぎると高リスクの地域が高額になり、逆に加入できなくなる恐れもあるという。それでは本末転倒だ。

 たとえリスクが大きく保険料が高額になりますと言われても、資産である土地や不動産の場所を簡単に変更することはできない。払い続けることが可能な金額に抑えるために、どの程度までリスクを反映した保険料を設定するかが肝だろう。早ければ2024年度頃から新料率に基づく保険料が設定されるのでは、との報道もある。今後の動向を注視していきたい。

 これまでの経緯を見ていくと、火災保険の保険料はこの先下がるとは思えない。大規模な自然災害は起き続けるだろうし、人口が流入する地域では、これまでリスクが高いと言われていた場所にもどんどん住宅が立ち並ぶ。都市部でも排水設備の管理いかんで内水氾濫の危険度も増すだろう。

 さまざまなものが値上がりする中、火災保険のアップは家計に痛手だ。それでも住まいが被災したときのダメージを考えると、預貯金だけでは賄いきれない金額になってしまう。住宅ローンを抱えている家計へのダメージは、さらに大きくなる。10月以降の火災保険加入や更新は、改めて我が家に起きうる災害リスクについてじっくり考える機会になりそうだ。

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。
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