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品川区長選「当選者なし」で再選挙、多額税金が無駄に…異常事態が起きた事情

文=Business Journal編集部
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再選挙を伝える品川区選挙管理委員会の公式サイト

 任期満了に伴う東京都品川区長選(2日投開票)は、特別区長選で初めての再選挙となった。無所属新人5人、諸派新人1人の計6人で競われた選挙戦の結果、誰も法定得票(有効投票総数の4分の1)に達しかなったのだ。都心の“注目区”でもあり、選挙戦では各政党や政治勢力も支援に乗り出していたのだが、結末は“勝利者なし”だった。

 品川区選挙管理委員会の発表によると、当日有権者数は33万516人。投票率は35.22%(前回32.71%)だった。公職選挙法の規定に基づき、14日間の異議申し出期間を経て50日以内に再選挙が行われる

宙に浮いた役所職員票

 品川区では東京都区内の区長公選制が復活した1975年以降、職員出身の助役(副区長)経験者が区長に選出され続けていた。しかし今回の区長選では、初めて職員出身の候補者が擁立されなかった。品川区元幹部は次のように今回の選挙戦を振り返る。

「品川区の職員数は約1500人です。大きな組織票を持つ有力団体のひとつである“役所職員の票”が、今回は実質的に“宙に浮いた”形になったといえるでしょう。そもそも低投票率が続く都心の首長選では、“自治体職員の票の取りまとめ”は当落を左右します。

 実態はどうあれ、首長選では“政党推薦”は受けても、“無所属”で立候補するのが当たり前。任期満了で勇退する濱野健現区長はある候補に“支援の姿勢”を見せましたが、“後継者指名”をしたわけではなかった。それなりに影響があったのではないかと思います」

 “濱野区長が支援の姿勢”を示したのは、日本テレビ元記者で、「都民ファーストの会」を離脱後に「無所属 東京みらい」幹事長を務めた前都議の森沢恭子氏(43)だった。小泉純一郎元首相の“番記者”だったことで、政界や報道関係者の間で知られる人物だ。

 森沢氏は、6人の立候補者の中で最多の2万7759票を獲得したが、法定得票の約2万8300票に600票足りなかった。

 森沢氏は選挙戦大詰めの9月30日、自身のブログに『【品川区長選挙2022】「本当に無所属?」「若いわね」「誰に投票していいかわからない」』と題する記事を投稿。選挙戦を通じて、「本当に無所属かどうか」を有権者から頻繁に問われることを挙げ、都民ファースト離脱後、自身が完全無所属となったことを強調し、「候補者6人中宇5人が『無所属』としているため、普段『〇〇政党所属だから』で投票している方が判断できない、という状況になっているのだと推察します」と述べていた。

なぜか“自民党推薦”の文言のない選挙公報

 森沢氏に次ぐ2万6308票を獲得した自民党推薦の元区議、石田秀男氏(63)。しかし区選管発行の選挙公報には“自民党”の文字は見たらない。都議会関係者によると、選挙戦では故・石原慎太郎元都知事の三男で、自民党宏池会(岸田派)に所属する石原宏高衆院議員らが選挙戦を手伝ったという。全国紙政治担当記者は語る。

「自民は国葬や旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と政治をめぐる問題の影響で、世論の風当たりが強く、おそらく“自民党として推しきれなかった”のでは。自民への逆風は、地方選挙に影響が出始めていいます。国葬を言い出したのは、岸田(文雄)総理ではなく、誰の発案で、その発案を強く後押ししていたのが誰だったのか。旧統一教会と党とのパイプはどう構築され、誰によって維持されてきたものだったのか。全責任は現総裁・総理が負うのは当然としても、自民党としてことの経緯を公式に説明したほうがいいと思いますがね」

 一方、選挙公報で比較的に立場を明確にしていた元銀行員の山本康行氏(46)もまた、2万4669票の獲得に留まり、法定得票には届かなった。地元の立憲民主党衆議院議員、松原仁氏の支援を選挙公報に明記し、都内若手区議会議員の有志らも陣営に駆け付けていたが、やはり“決め手”を欠いたようだ。

 ちなみにそのほか3人新人の得票数は、前区議の西本貴子氏(61)が1万8559票、共産党推薦の大学非常勤講師の村川浩一氏(75)が8279票、諸派扱いの「品川に維新を起こす会」の元区議大西光広氏(65)が7821票という結果だった。

 なお公明党は自主投票を表明した。

住民の関心を呼ばない不明確な争点

 では、品川区長選の争点はなんだったのか。地元建設業者は話す。

「子育てや福祉など一般的な話題を除き、品川独自の争点は羽田空港着陸機の降下新ルート対応とか、駅前や区役所庁舎の再開発とかですかね。駅前と庁舎建て替えは、地元事業者にとって非常に大きなテーマですが、大企業勤務の多い品川区の住民には関心の薄いテーマかもしれません。選挙やり直しとなれば、また税金が無駄に使われます。こういう事態は避けるべきだと思います」

 創価学会、立正佼成会、生長の家(現在は政治との関係性を否定)といったさまざまな宗教団体や、連合や共産党系の全労連といった労組の動きは、低投票率が続く首都圏の地方選挙の動向に少なからず影響を与えてきた。自民党関係者は語る。

「選挙に注目される争点がなく低投票率が見込まれる中で、候補者が乱立すれば“終盤戦であと少しの上積み”を可能とする“組織票”が当落を決めるカギになります。つまり今、話題になっている旧統一教会と同種の問題にいきつくわけです。

 首都圏など都市部の地方選挙の投票率が上がらない限り、基本的に組織票を積み重ねていくものです。しかし組織票の負の側面が世の中に明らかにされてしまった。これからかは旧統一教会はもってのほか。その他の“宗教団体”や“組織票を持つ団体”へのお願いも、有権者から厳しい批判を浴びることになるのではないでしょうか。今後、立候補者が乱立した場合、こうした再選挙が起こる可能性が十分にあると思います。

 今後は有権者が関心を持つ争点や政策を、立候補者がどれだけ提示できるかどうかにかかっていると言えます」

 総務省によると全国の首長選で、再選挙となるのは2017年の千葉県市川市長選以来という。ちなみに17年の市川市長選は、後に“テスラ公用車問題”や“市長室ガラス張りシャワールーム設置問題”などで注目された市長が誕生する契機になった。

 今回の品川区長選は歴史上7例目という。再選挙にかかる費用の問題も大きい。8例目、9例目と再選挙が続かないといいのだが。

(文=Business Journal編集部)

 

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