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「わかしん。」が「生きテク」活動に取り組むワケ

文=Business Journal編集部
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活動を再開した生きテクの今度の方針について意見を交わす若新氏(左)とオキタ氏

 テレビのワイドショーのコメンテーターとしても活躍するプロデューサー・研究者の若新雄純さんが若者の自殺防止を図る運動「生きテク」に積極的に参画している。生きテクは事業再生を手掛ける実業家のオキタ・リュウイチさんの主導する社会活動で、2000年代に若者を中心に共感の輪が広がり、自殺者の減少にひと役買った。活動の運営主体が近くNPO法人の認可を得て、新生「生きテク」が再始動する。幅広い世代に影響力のある若新さんが参画することで、活動は再びムーブメントを巻き起こし、近年増加に転じた自殺に歯止めをかける試みとして期待されている。

「生きテク」の主宰者オキタ・リュウイチさんに共鳴

 若新さんは「わかしん。」の愛称でテレビ朝日系情報番組の『ワイド!スクランブル』やTBS系報道・情報番組の『Nスタ』、AbemaTVの『ABEMA Prime』などにコメンテーターとして出演。ジャンルを問わず、「柔軟で独創的なコメントをする」として人気を博している。本業は企画プロデュース業で、慶応大特任准教授の肩書も持ち、コミュニケーション論などを教えている。オキタさんとは旧知の中で、オキタさんの取り組む社会活動に長年協力している。生きテクにも初期段階から主体的に関り、NPO法人化を機に理事に就いた。持ち前の企画力を発揮し、オキタさんらと共に活動をリードしている。

自殺を踏みとどまった技術をカタログ化

 生きテクの活動は国内の自殺者が年間3万人台で推移していた2008年にスタートした。「インターネットを開けば自殺マニュアルが簡単に手に入るなど『死ぬ技術』は世にあふれているのに、自殺を踏みとどまった『生きる技術』は全くと言っていいほど認知されていない」という発想から生まれた。「自殺マニュアルの向こうを張り、『生きる技術』=『生きテク』をカタログ化して世に広めよう」(オキタさん)と活動を開始。「自殺を考えたけれども回避できた」10~20代の若者に数百人規模でインタビューし、「なぜ自殺を志願したのか(理由)」と「どうして自殺を避けられたのか(テクニック)」の2つを聞き取り、証言を蓄積した。

 そのうえで「理由」「テクニック」とも8形態に分類。「理由」は「恋愛、過労、病気、いじめ、死期、暴力、借金、その他」に分け、「テクニック」も「文芸、身体、場所、アカデミック、コミュニケーション、働く、時間、法律」の各系統に細分化した。テクニックは例えば「文芸」なら「本や音楽に出合って自殺するのが馬鹿らしくなった」、「身体」なら「体を鍛え、スポーツに没頭したら自殺する気がうせた」などと整理している。8つの「理由」と8つの「テクニック」を掛け合わせ、64通りの自殺防止策を体系的に例示する「生きテク」をまとめた。

若者を中心にたちまち話題に

 生きテクは専用サイトで公開され、たちまち反響を呼んだ。活動に賛同した若者らが生きる価値を伝えるメッセージをプリントしたTシャツを着て一斉にJR山手線に乗り込んでPRする「山手線ジャック」など関連イベントを矢継ぎ早に打ち出し、関心を呼び寄せる。民放キー局など80を超すメディアに取り上げられ、大きなムーブメントになった。活動は書籍化されてベストセラーになり、オキタさんは08年、日本青年会議所の人間力大賞で厚労大臣奨励賞を受けた。「生きテクを知って自殺を踏みとどまった人」の人数を「生きテクメーター」としてサイトに載せ、これまで2万7000人を上回る人がサイトの「生きてみる」ボタンを押した。

活動休止、そして再開

 生きテクの成果もあったのだろう、国内の自殺者は10年から減少傾向をたどった。警察庁によると、12年には3万人を切り、7年後の19年には2万169人に減った。オキタさんは「生きテクの当初の目的は達成した」として活動にひと区切りをつける。減少局面を続けていた自殺者は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、20年に増加に転じ、翌年には2万1007人に上った。オキタさんは「生きテクへの社会的要請が再び高まった」と受け止め、活動再開を決意。本格的な活動に打って出るには財務基盤を強固にする必要があるとして、組織をNPO法人化することを決めた。

「自殺を回避できた人がその後、どう生きるか」

 法人化を記念するトークイベントが2月に都内で開かれ、若新さんとオキタさんらが今後の活動方針について意見を交換した。若新さんは「以前の生きテクは自殺者を減らすことに主眼を置いていたが、新しい生きテクは自殺を食い止めるだけでなく、その人がその後の人生をどう歩んだかに価値を求め、見届けたい」と抱負を語った。オキタさんも「生きテクで自殺を見送った人を全員、社会活動家にしたい。そうすれば日本を良くする原動力になる」と応じた。

生きテクを通じて日本を再生

 若新さんはオキタさんの活動に協力するようになった理由について「彼は生きテクだけでなく、若者の非行が社会問題化して『キレる10代』という言葉が流行語になった時代に100の善行をすれば望みがかなう『ヘブンズパスポート』、神社の衰退にストップをかける『神社再生計画』など、さまざまな社会活動に取り組んでいて、その独特なアプローチに興味を持ちお手伝いするようになった。彼は独自のブランディング手法で、世のあらゆるヒト、モノ、事象の価値を見直し、その不変さを追求する『ディープ・ブランディング』という基本構想を持っていて、生きテクはそれを具現化する活動の一つ。これからもパートナーとして彼の取り組みを一緒に深めていきたい」と語っている。

 生きテクは4月にも東京都からNPO法人の認可を受ける予定だ。専用サイトを全面リニューアルするほか、新たに当事者の証言を確保するなど活動を本格化させる。

 

BusinessJournal編集部

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