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宝塚歌劇団のファンアート禁止が物議…「SNSへの投稿禁止」に法的拘束力はあるのか

文=Business Journal編集部/協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表
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宝塚のファンアート禁止が物議
宝塚大劇場・バウホールと宝塚音楽学校(「Wikipedia」より)

 宝塚歌劇団の公式サイトに以下のようなQ&Aが掲載され、ファンや関係者の間で同様が広がっている。

質問「出演者のイラストを描きました。SNSに投稿してもいいですか?」

回答「宝塚歌劇団の出演者の写真(舞台写真およびそれ以外もすべて含みます)、公演チラシ・ポスター、映像、芸名、台詞・歌詞、衣装、音源、小道具・舞台装置、各種ロゴマーク等の著作権・肖像権・パブリシティ権は、宝塚歌劇団やその他の権利者に属します。
商用利用・個人利用に限らず、これら宝塚歌劇団が権利を有する著作物等や出演者の肖像を流用することはお断りしており、イラスト化に関しても肖像権やパブリシティ権の侵害にあたる可能性がございます。
個人様が描かれたイラストをご本人様が所持されることに関しての制限はございませんが、個人様のホームページやブログでの掲載、Twitter、Instagram等のSNSを含むインターネット上への投稿、SNS等のアイコンやヘッダーでの利用、印刷物への掲載、その他すべての許可のない掲載はご遠慮くださいますようお願いいたします」

 この投稿を見たファンの間で、「宝塚がファンアートやイラストレポを全面禁止にした」とSNS上で大きな話題になった。ファンアートとは、漫画や舞台作品の登場人物などをモチーフにした、イラストや漫画などの二次創作物だ。

 タレントの写真や著作物などの著作権に関しては、取り扱いが慎重になされるべきであるが、ファン個人が描くアート作品にまで禁止することには、賛否両論が渦巻く。「時代錯誤な対応」と批判の声もある一方、ファンアートによる宣伝効果よりも著作権・肖像権を守りたい劇団側の意向に理解を示す向きもある。

 だが、歌劇団側が指摘するように、実際にファンアートが「肖像権やパブリシティ権の侵害にあたる可能性」はあるのだろうか。また、ファンアート禁止という劇団側の発表に、法的拘束力はあるのか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、次のような見解を示す。

「芸能人のような表に出てカネを稼いでいる方々の場合、一定程度、プライバシーとしての肖像権は制限されます。もっとも、プライベートな場所での様子を写生されたり、わいせつな内容で作画されたりした場合は、プライバシーの侵害や名誉毀損などが問題となります。ただ、ほとんどの場合、問題にはならないでしょう。

 次に、芸能人の『肖像』については、それ自体に商業的価値(芸能人がテレビCMに出ているから、芸能人の顔がプリントされているから、といった商品を買おうという動機を生む価値)がある場合があります。この場合、ファンが自ら作成した『イラスト』について鑑賞料を取ったり、自分が売っている商品にプリントしたりすると、パブリシティ権という『肖像』に関する商業的権利を侵害する場合があります(この限りにおいて、劇団側の記載は法的拘束力があるということになります)。

 ただ、劇団側が禁止する『ホームページやブログでの掲載、インターネット上への投稿、アイコンでの利用』は、その『肖像』によりお客さんを誘因する商業的効果を狙っている者ではない限り許されると思われます。ちと厳しすぎですね」

 商業的利用をしない限り、ファンアートをSNSなどに掲載したからといって権利侵害となる可能性は低そうだ。だが、タカラヅカを愛するファンたちにしてみれば、公式に劇団側が発表した“お願い”には従うべき、との思いが広がっている。だが、これがかえってファンの間で新たな紛争の火種にならないことを願うばかりだ。

(文=Business Journal編集部/協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。
山岸純法律事務所

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