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飲食業の人は1度は見るべき…コミケ中のカフェ・ベローチェ、驚異の店舗運営の秘密

文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表
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カフェ・ベローチェのHPより

 毎年8月と12月に開催される世界最大級の同人誌即売会『コミックマーケット』。今年8月は12~13日に開催され計26万人が来場する盛況ぶりをみせたが、会場となった東京ビッグサイト(東京・江東区)前に位置する「カフェ・ベローチェ 有明店」のオペレーションに絶賛と驚嘆の声が集まっている。8月12日付「日刊SPA!」記事によれば、コミケ開催中は有明店に他店の店長やスーパーバイザーなど業務の熟練度が高いスタッフが集められ、通常の5倍の数の人員が投入されるというが、なぜカフェ・ベローチェは高効率の店舗オペレーションを実現できるのか。専門家に解説してもらう。

 ベローチェは、「アイスコーヒー」(R)、ホットの「ブレンドコーヒー」(R)が280円(税込み)となっており、「ドトールコーヒーショップ」(「ブレンドコーヒー」<M>300円)などと同じ低価格帯のセルフサービス式カフェ。店舗数は約160店舗となっており、国内カフェチェーン規模は10位あたりとみられる。

 カフェ・ベローチェの定番メニューとして人気なのが、贅沢にソフトクリームが乗せられた「コーヒーゼリー」だ。このほか、店内で調理されるサンドイッチ類や太麺を使用したパスタ類も人気で、ヨーロッパのカフェをイメージした落ち着いた内装やゆったりとした席も定評がある。

 そんなベローチェは、以前から年2回開催されるコミケへの並々ならぬ熱の入った対応が一部で話題を呼んでいた。実際にSNS上では以下のような声が多数寄せられている。

<昨年コミケ時のベローチェさんに行ったら、飲食バイトしてた姪っ子が「店員さんの動きが早すぎる…」と慄いてました>

<注文伝えてレジでお金払ってる間に注文品置かれるのw現金払いだと商品提供スピードに負ける>

<コミケの有明ベローチェはマジですごいからな……スタッフ同士が会話なしで目配せだけで空席状況把握してくるし、注文したと思ったら10秒くらいで出てくるから>

<入口のスタッフがハンドサインで店内各所にいるスタッフとコンタクトをとって次々と席まで案内していくので、全然待った気がしなかったです!! スタッフ全員丁寧でもはやホテルのようなサービスは感動体験でした!! 精鋭スタッフマジぱない>

<コミケ期間のベローチェは接客業やってる人は1度は見といた方が良い。あれだけの客足なのにちっともバタつかないし、ムダがない。なのにコミュニケーションはめちゃくちゃこまめに取ってて、誰1人ボサっとしてないし、客が帰ったテーブルに物が残ってない>

各スタッフの頭の中におけるストーリー作り

 同じ飲食店でもオペレーションが良い店と悪い店がみられるが、その差を生む要因はなんなのか。また、オペレーションを向上させるために、具体的に飲食店では、どのような取り組みが行われているのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「店舗のオペレーションを高めるには、キッチンをはじめとした店舗内部の造りが効率的であることが前提となります。これはオープン時の内装で決まってしまうものなので、特に個人経営店の開業においては大きな注意点です。導線(人の動き)上で、できるだけ人と人がバッティング(衝突・交差)しないように、

・厨房の出入口を2カ所確保する
・厨房内の通路は人が交差できるくらいの幅をもたせ、人が回遊できるようにする
・ホールで必要なものと厨房で必要なものの配置を分ける
・ホール用の作業場所と厨房用の作業場所を分ける
・水回りの適正な配置をする
・ホールからバッシング(食器を下げてくること)した食器・グラスを置く場所を確保する

など、実際の動きを想定しながら決めておかないと効率的なオペレーションは実現できません。チェーン店においては経験やデータが豊富にありますから、この基本的な部分はクリアされていることでしょう。

 以上を前提としたうえで、現場での人の動きを考えるべきです。カフェ・ベローチェの場合、各スタッフの頭の中におけるストーリー作りが素晴らしいのだと思います。『今、こういう状況だから、次にはこうなるはずで、そのためにはこれをやっておこう』という、先の読みから今やるべきことを前倒しで行う『先読み能力』に長けているのでしょう。そのような店員が多いほど、商品の提供やバッシングも早く、お客さんのストレスは減り、店の回転率が上がります。

 また、店員の空間把握能力もオペレーションにおいては重要な要素です。これは、お客さんの状況を冷静に把握する力、周りのスタッフが何をしていて自分が何をすべきか理解し行動する力です。よく飲食店で、お客さんが箸を落とすと、ささっとやってきて箸を取り換えてくれるスタッフがいますが、こういうスタッフは自分の周辺にレーダーをはったゾーン(大きな円)をつくっており、そのなかで起きたことを把握し体を動かします。その円が大きいか小さいかが、各スタッフの空間把握能力の違いとなります。その違いが、優秀なスタッフとぼ~っとしているスタッフの分かれ目です。先読み能力や空間把握能力に長けたスタッフは、お客さんとコミュニケーションを取っていいタイミングかそうでないタイミングかも判断できるので、お客さんが感じるサービスやホスピタリティも向上します」

スタバやサイゼリヤも高い品質のオペレーション

 では、店舗のオペレーションの良しあしは、その店の業績・経営を大きく左右するものなのか。

「もちろん大きく左右するので、飲食店では店員に対して各種研修や現場での指導を行っています。カフェ・ベローチェ以外ではスターバックスコーヒーは付加価値を重視するサービス・ホスピタリティで有名ですが、スムーズなオペレーションが前提にあってのことでしょう。また、キッチンのオペレーションをベースに総合的なオペレーションの向上を実現しているのがサイゼリヤです。

 オペレーションをスムーズにこなすには、慣れと個々の能力・適性も影響してくるので、どうしても経験差や個人差が出てしまいます。そのためお店としては、研修だけでなく、店員に経験を積ませ、現場で都度指導するやり方で個々のレベルアップを目指すほかありません。今回のベローチェの例は、これらの能力に長けた店長たちが集まることで、かなり効率的なオペレーションが実現できた結果といえるでしょう」

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

Instagram:@masakazuema

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