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吉野家「から揚げツリー」、価格妥当性に疑問…スーパー「ライフ」より品質劣る

文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト
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吉野家「から揚げ定食」(撮影=重盛高雄)

「吉野家」がクリスマスの期間限定商品として「から揚げツリー パーティーキット」(1941円/税込、以下同)を販売することが話題を呼んでいる。大手牛丼チェーンとして知られる吉野家は、ここ最近は、から揚げメニューを第2の柱に据えて注力しているが、なぜ「から揚げ」でツリーをつくるという奇抜なパーティーキットを販売するのか。その狙いについて、業界関係者の見解も交えて追ってみたい。

 吉野家は現在、全店舗の約7割で「から揚げ」メニューを提供。「から揚げ丼」(545
円)や「から揚げ定食」(688円)、「から揚げ黒カレー」(644円)、「ヤンニョムから揚げ丼」(655円)、から揚げと牛丼のアタマが乗った「から牛」(643円)などを販売している(価格はいずれも並盛)。吉野家の公式サイトのトップページを開くと「から揚げ」を調理する動画が流れることからも、から揚げに注力している様子がうかがえる。12月1日から25日までは「から揚げ」全商品を10%オフする『から揚げ祭』も展開中だ。

 そのクオリティ向上への取り組みは熱い。一般的な外食で提供される「から揚げ」の標準サイズより1.5倍以上も大きい鶏もも肉を使用し、生姜を入れた特製たれに48時間漬け込み、「カリッとした食感とうまさを最大化するための特別な配合をした粉と油」(同社HPより)を使って高温の油で揚げているという。フードアナリストの重盛高雄氏はいう。

「実食してみた感想としては、価格妥当性は高くない。から揚げ丼はから揚げ3個、から揚げ定食は4個提供される。確かにサイズは大きめだが、肝心の肉質としては歯ごたえはあまり感じられない。部位にもよるが噛みごたえを感じさせない仕上がりとなっている。タイ産の鶏肉を使用しているが、国産かどうかの問題ではなく、どう仕上げるかが課題。衣にもほとんど主張が感じられず、定食は平板な味わいで食は進まない。この味わいであれば3個が限界ではないか。

 また店舗により提供時間に差があることも課題といえる。東京都内のある店舗ではタッチパネルで注文後、数十秒で提供された。別の店舗では提供されるまで5分くらい時間を要した。吉野家のから揚げは揚げたてでなければ、強みを発揮することは難しい。客もから揚げは時間がかかるものと思っているから、早く出す必要はないと考えられる。時間がかかっても最適な状態で商品を提供することのほうが優先されるべきではないか。付け合わせのキャベツも水を切りすぎており、パサパサ感が際立つ。比較としてスーパー『ライフ』の総菜のから揚げを食べてみると、持ち帰りが前提の仕上げとなっており、自宅で電子レンジで温めてもおいしく食べることができる。

 価格が安いだけでは、牛丼に次ぐ、客に選ばれる柱の商品になるかどうか。吉野家のから揚げがどの客層をターゲットとして想定しているのか、残念ながら伝わってこなかった」

 また、外食業界関係者はいう。

「特に店内飲食で揚げたてを食べると、ジューシーかつカラッとしていて、生姜が効いたたれもしっかりとしみ込んでおり、サイズもスーパーの総菜で売られているものより一回り大きいという印象で、悪くない。かなり力を入れて商品開発したと思われる。牛丼やハンバーガー、カレー、とんかつ、ラーメン、ハンバーグ、ステーキを専門とするチェーン店は多いが、日本人の定番メニューである『から揚げ』を専門に扱う飲食店はまだ少ない。から揚げをテイクアウトで販売する店は増えているが、駅近などで気軽にファストフード感覚で『から揚げ』メニューを食べられる店は少なく、ファミレスだと少し割高になってしまう。吉野家としては、その『最後の空白地帯』を狙って攻勢を仕掛けているのだろう。

 一つの店舗で牛丼と『から揚げ』の2つのメインメニューを持てば、どちらを食べるか決めていないけれど『とりあえず店に入ってから決めよう』という顧客行動を誘い、来店客の増加にもつながる。飲食店はとにかく客に来てもらえばその分売上は上がるので、来店の動機をつくり出すというのは重要。特に『から揚げ』は目に入ると食べたくなる食べ物の一つなので、店で牛丼を注文した客にメニュー表にある『から揚げ』を見せて『明日はから揚げを食べに来よう』と思わせることに成功すればしめたもの。マクドナルドがハンバーガーの他にもチキンマックナゲットやマックフライポテトといった強力な人気メニューを持つことで高い来店客数を維持しているように、人気メニューを複数持っておくことは飲食店にとって強みとなる。おそらく吉野家もそこまで見通しているだろう」

家族4人で2000円以下に収まるというのはコスパも良い

 そんな吉野家が斬新な商品でクリスマス商戦に参入したと話題となっているのが、「から揚げツリー パーティーキット」だ。から揚げ9個と星型のお麩、ポテトサラダ、生野菜サラダ、ブロッコリー、ケチャップに、ツリーをつくるための爪楊枝と手袋もついて1941円。公式サイト上にアップされている、つくり方の紹介動画には、ポテトサラダを山状に盛ってその壁に「から揚げ」を盛り付け、星型のお麩をちりばめるパターンや、お皿の上に平面上に山を描くように「から揚げ」を並べるパターンが紹介されている。ちなみに競合他社である「松屋」と「すき家」ではクリスマス関連メニューは展開されていないが、SNS上では、

<吉野家、あまりにも無謀な挑戦をしてしまう>

<暴挙に出る>

<牛丼屋が無理してクリスマスに乗っかってる>

<クリスマスと何も関係もない>

<二千円出すなら他のもっと美味しそうなのを買う>

<ファミリー、カップル、独身全ての層に受けなさそう>

などとさまざまな反応が寄せられている。前出・重盛氏はいう。

「価格妥当性は高くない。吉野家は12月に『から揚げ祭』と称して全品10%オフを実施し、から揚げ市場における優位を築こうとしている。12月といえばクリスマスを控え、例年ケンタッキーフライドチキンとコンビニエスストアの熱い戦いが繰り上げられるが、ここに吉野家も参入を企てていると見て取れる」

 外食チェーン関係者はいう。

「一瞬見たときは『ギャグ?』『話題づくり狙いか』とも思ったが、よく考えると意外にアリかもしれない。吉野家の『から揚げ』は単品で140円なので9個だと1260円。それにポテトサラダとサラダ、ブロッコリーが付いて1941円なので、積み上げ価格としてみれば決して高くはない。特に小さい子どもが2人いる4人家族の場合、子どもは『から揚げ』が好きだろうし、星型の麩を使ってツリー状に盛り付けて楽しむこともできる。吉野家の『から揚げ』はサイズが大きいので2~3個食べれば結構お腹が満たされるし、『クリスマスにから揚げはないだろう』という先入観を捨てれば、家族4人で2000円以下に収まるというのはコスパも良い。たとえばクリスマスのシーズンはスーパーやコンビニではローストチキン1本が500~1000円で売られており、それとの比較ということになれば十分に選択肢には入ってくる。

 ただ、やはり年に1度のクリスマスの料理を吉野家で調達するということに抵抗を感じる消費者は少なくないだろうし、わざわざ事前にこれを予約して買う客がどれだけいるのかは疑問。このような『尖った商品』の企画がなぜ吉野家社内で通って販売に至ったのかは謎だが、同業他社としてはセールスの結果がどうなるのかが興味深い」

 同商品の予約は店頭または電話のみの受付で、受付期間は12月1日~23日まで、商品受け渡し期間は12月22~25日となっている。テイクアウトスマホ予約、デリバリーは対象外。
(文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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