学生の大手志向が強まっている背景には、今春卒業予定者の内定率改善や、景気回復期待の高まりを受け、昨年、就職難により高まった中小企業人気が一変したことがあるという。
採用支援のレジェンダ・コーポレーションの調査によると、従業員500人以下の企業で「前年より採用に苦戦する」と回答したのは前年比13.1ポイント増の62.0%。一方、2001人以上の企業で苦戦するとの見通しは、前年比35.8ポイント減の34.4%と、如実に数字に表れている。
実際に、中小企業である医療用具メーカー・アルケアや環境試験機メーカーのスガ試験機は、学生のエントリー数が前年比7割にとどまっているという。
リーマンショック後、中小企業への入社を志望する学生は急増し、13年春に就職する学生で中小企業を志望した学生は、大企業を14年ぶりに上回ったが(リクルートワークス研究所調べ)、就職情報・マイナビの三上隆次マイナビ編集長は、「学生の大手志向が再び高まりつつある」と分析している。
しかし、前出のレジェンダ・コーポレーションによれば、14年春入社の新卒採用目標数が「前年を上回る」と答えた大企業は21.9%で、「前年を下回る」の25.0%より低くなっており、学生と企業側のミスマッチが深まる可能性もある。
また、企業側の採用活動にも変化が生じている。
経団連が倫理憲章を見直し、学生の就職活動を2カ月短縮したため、企業は効率を重視し、大規模な採用イベントへの参加を控え、特定の大学での説明会や自社での説明会を増やしている。就職情報・ディスコの調査によると、52.8%の企業が「大学内での説明会を増やす」、42.1%の企業が「自社での説明回答を増やす」と回答している。
例えば富士ゼロックスは、14年新卒採用で大規模な就活イベントへの参加をやめ、代わりに大学での説明会に注力。学部や学科が主催する小規模な説明会にも参加している。
これまで企業は「学歴不問」をうたい、幅広く学生に門戸を開く傾向が強まっていたが、採用の効率化を重視し、活動を特定の大学に絞り込む企業が増えているのが特徴である。
(文=編集部)