本事件は結果的に、返金については和解が成立したのだが、口座凍結については、販売会社側が不当と訴えているにもかかわらず、依然として解除されていない状況だ。また販売会社はA弁護士の強引な手法について、A弁護士が所属する第一東京弁護士会に訴え出たが、弁護士会側もA弁護士をかばうばかりで話し合いにならない状況であった。
C弁護士の事例
C弁護士は、ある県の弁護士会をはじめとして、さまざまな法人の要職を歴任してきた人物である。弁護士の鏡として行動を律して範を示すべき立場のC弁護士だが、法律で規制対象となっている利益相反行為を疑われる事態となっている。
利益相反行為とは、ある行為によって一方の利益になると同時に、他方への不利益になる行為のことだ。特に弁護士など、中立の立場で仕事を行わなければならない者が、自己や第三者の利益を図り、依頼者の利益を損なう可能性のある行為については、法律によって禁じられている。しかし、C弁護士は利益相反行為を行ってきたと疑いをかけられている。
事件は、県内に本社を置く運送会社の経営者一族による遺産相続に関わるものだった。経営者が亡くなり相続が発生したのだが、経営者の妻は後妻であり結婚する際、「彼が自分より先に亡くなった場合、彼の財産のうち自宅マンションだけしかいらない」と誓い、その旨の念書も書いていた。しかし、実際に相続が発生してみると、遺言書がないこと、および事前の相続放棄は無効であることを理由に法定相続分を要求している。この件は現在、弁護士間で交渉中である。
本件相続問題において、後妻側の代理人となったのがC弁護士なのだが、ここに利益相反の問題があるのだ。
C弁護士は、当該運送会社が加盟し、かつ当該経営者が理事を務めたこともある社団法人の監事を務めている。法人の監事が、所属する運送会社のお家騒動の一方の代理人となって騒動に参画している状況なのだ。
筆者は別の弁護士に当該事案について質問したところ、彼も同様に疑問を抱き、このような見解を示した。
「同法人の公的側面、弁護士に対する社会的な信頼という観点からいうと、相当問題がある。厳密には違法とまでは言えなくとも、利益相反として倫理的には避けるべきケースと言わざるを得ない」
筆者はこの見解を受け、C弁護士に取材を申し入れたが返答を得られなかった。致し方なしに直接事務所を訪問したが、強硬な剣幕で「答えることは何もない。立ち去らないと不退去罪だ」と恫喝してくる始末であった。弁護士ならば然るべき論理で、根拠を挙げて説明してもらいたいものである。
(文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)