上場1カ月後の14年4月、14年3月期の決算見通しを引き下げた。つまり上場直後に決算を下方修正したのだ。さらに同年10月15日には15年3月期の決算見通しについて、増益から一転100億円の最終赤字に下方修正した。上場後の業績予想下方修正は2度に及び、株式市場からは批判が浴びせられた。
そもそもJDIの発足当初から、大塚社長の経営手腕には疑問符が投げかけられていた。大塚氏は米テキサス・インスツルメンツ(TI)の工場長や、ソニーのシステムデバイスカンパニープレジデントを務め、TI時代の先輩であるエルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)の坂本幸雄社長(当時)に誘われ同社に転じた。坂本氏の側近として日本唯一のDRAM専業メーカーの最高執行責任者(COO)に上り詰めた。だが、エルピーダは12年2月、会社更生法を申請して倒産した。
業界に通じていることを買われて大塚氏はJDIの社長に就任したため、「JDIはエルピーダの二の舞いになるのではないか、と冷ややかに見られていた」(市場筋)。そしてJDIは業績下方修正を繰り返し、市場の信頼を失った。
赤字転落
JDIの15年3月期の連結決算の売上高は前期比25%増の7693億円、営業利益は81%減の51億円(前期は276億円の黒字)、最終損益は122億円の赤字(同339億円の黒字)となった。中国のスマホ向け市場が拡大したことで増収になったが、競争激化による液晶価格の下落や埼玉県・深谷工場の閉鎖に伴う損失計上が響いた。期初には268億円の最終黒字を予想していたが、一転して巨額な赤字に転落した。
JDIの売り上げの8割はスマホ向け。韓国サムスンディスプレイが中小型高精細液晶を中国で年間数千万枚単位で外販する計画を打ち出しているため、「今後1年間で(液晶価格は)2割程度下がる」とアナリストは見ている。中国経済は明らかに減速しており、JDIの思惑通り売り上げが推移するかどうかは不透明だ。
JDIは液晶市場の需要変動が激しいことから、16年3月期から年間業績予想の開示を見送ることにした。ただ、辞任する大塚社長は「連結売上高1兆円は見えてきた」と強気の発言を5月13日の決算発表でした。唯一、公表した数字は15年4~6月の第1四半期の営業利益で20億円という予想。7月以降は「四半期ごとに100億円規模の利益を出せる」(西康宏執行役員)とし、期末に初の配当を実施する考えだという。
だが、この第1四半期の予想に関しても、外資系証券会社アナリストは「見栄えが悪い」と辛口の評価を下している。
今後の成長を占うカギ
調査会社ディスプレイサーチの調査によると、14年の中小型液晶パネルの世界シェアトップ3は韓国LGディスプレー(18.1%)、JDI(16.0%)、シャープ(15.6%)。中小型液晶業界は中国勢、台湾勢が台頭してきており、乱売合戦が激しい。