もっとも、ただ出席するだけでは芸がない。経営陣との質疑応答の際に、必ずなんらかの質問をすることにした。入場券にあたる議決権行使書は縁者、知己の協力もあって相当な数が集まり、取捨選択に悩んだものの、東芝、ソニー、東京電力など、不祥事や業績不振によって注目を集めている企業はあえて除外した。
わざわざ出向かなくても、それらの企業の動向はマスコミが伝えてくれるからだ。
商船三井(6月23日10時/品川インターシティホール)
トップバッターに選んだのは、10年ほど前に出席したことのある商船三井だ。日本郵船と並ぶ海運の代表的企業である。会場は、品川駅前のインテリジェントビル群の中にあるホールだ。
通勤ラッシュ時とあって駅構内や駅前はごった返し、想定より時間がかかり、開会10分前に到着した。手渡された株主番号は700番台で、会場前方はすでに満席状態だ。
やむなく、会場の中央あたりに着席する。事業報告と決議事項の説明が30分ほどで終わり、質疑応答に移った。最初の質問は、会社側に原油や為替相場の見通しを尋ねるもので、次いで経営戦略の提案だ。議長(武藤光一社長)以下、経営陣が並ぶ壇上からは距離があったため、勢いよく挙手すると、無事指名された。
質問は「中国のバブル崩壊が懸念されている。決算短信のセグメント情報ではアジア市場に含まれている中国市場での総売上高に占める割合はどのくらいか」というものだ。
担当取締役から「直接、間接的な取引を含めて(中国市場の売上高は)2割程度」との回答があった。以降、社外取締役の勤務状況、2014年春に起きた中国当局による船舶差し押さえの処理などについて、合計9名が質問した。10余年前には、いかにもそれ風の株主が総会を仕切る発言をしていた記憶があるが、至って平穏に1時間36分で閉会した。
新日鐵住金(6月24日10時/ホテルニューオータニ)
四ツ谷駅から会場に向かう道すがら、新日鐵住金の経営体質を批判するグループがビラを配布していた。かつては大手企業の株主総会の会場近辺でよく見られた風景であり、懐かしさを覚えると共に「少しは荒れるかな」と期待しつつ入場する。