A氏によると、そんな自らの未来を憂えた銀行員たちが転職市場にあふれているという。さらに、「働き方改革」も業績悪化に追い打ちをかける。
「定時で帰れるのは良いのですが、それでは業績は上がらない。時間内にやれることは限られていますから。業務内容的に家に持ち帰ってやるわけにもいきませんし……。今期からはボーナスが一律で下がりました。その下がり幅は、リーマン・ショック時とほぼ同じだということです」(同)
地銀の消滅は待ったなし
昨年4月に金融庁が発表したレポート「地域金融の課題と競争のあり方」のなかに、「各都道府県における地域銀行の本業での競争可能性」という項目がある。要するに、「各都道府県に地銀がどのくらい必要か」を示したものだ。それによると、20県以上で「1行単独でも不採算」、10道府県以上で「1行単独ならば存続可能」という結果になった。
これを受けて、政府は銀行の統合を進める規制緩和策を打ち出した。全国地方銀行協会の笹島律夫会長(常陽銀行頭取)も政府の方針を歓迎するなど、官民挙げて統合の動きが進んでいる。
「地銀は各県にひとつずつあれば十分です。支店の統廃合も進んでいますが、それでは意味がない。すでに地銀は飽和状態で、少ないパイを奪い合っています。もはや、お客さんのためではなく、自らの経営維持のために働いているようなものです」(同)
近年は楽天やLINEなどが金融業に新規参入している。地銀にとっては、それらの存在も脅威だろう。多くの困難に直面している地銀だが、行内の意識は二極化しているという。
「主任クラスの30代以下の賢い人は危機感を持っています。しかし、それより上の世代では、やはり『潰れない』という銀行神話が根強い。フィンテック関連の部署もありますが、独自のシステムを開発するほどの技術も人材もないので、本気度は低いです。人口減少、AI、新規参入などで地銀が八方塞がりなのは明らか。僕も早めに見切りをつけないといけないですね」(同)
その必要性が失われつつある地銀。現場の行員が続々と逃げ出し始めていることからも、地銀の消滅は待ったなしの状況なのかもしれない。
(文=江戸川正/清談社)