しかし、銀行のような大組織では、個人の才覚を発揮するには限界がある。そんな折、中古自動車の買い取りや販売を手掛けるジャック(現カーチスホールディングス)のオーナーに請われ、同社に転職した。
01年にジャックの社長となった後、02年には会社更生法の適用を申請して再建中のスーパーマーケットチェーン・長崎屋に転職する。03年に長崎屋の社長に就任し、同社の更生手続きを指揮、06年に12年前倒しで会社更生手続きを終結させた。ジャックと長崎屋の事業に関わり、上山氏は「ビジネスの決め手は、財務諸表力(収益性の改善)を磨くことだ」と確信した。
リクルートマネジメントソリューションズの組織行動研究所の研究レポート『神輿には乗りたくない、財務諸表と現場力で企業の再建を~「プロ経営者」の育ち方・育て方研究インタビュー 第5回:上山 健二氏~』の中で、上山氏は以下のように語っている。
「ビジネスというのは、いろいろあっても結果は全部BS(貸借対照表)とP/L(損益計算書)、キャッシュフロー計算書に表れます。そこに全ての問題が集約されていると思いますし、実際集約されていますから、BSとP/Lがあれば十分です。だから業種はあまり関係ないと自分では思っています」
その後、上山氏は英会話教室GABAの社長、飲食店情報サイトぐるなびの副社長を歴任後、13年にワールドの常務執行役員に就任する。14年に常務執行役員COOを経て、15年4月に社長になった。
59年に畑崎廣敏氏と木口衛氏が創立したワールドは、日本有数のアパレルメーカーに成長した。畑崎氏は97年、60歳の若さで社長を退き、その後、投資家に転身した。投資家としては数々の仕手戦に登場し、有力仕手筋として株式市場の話題をさらっている。
ワールドの経営は、廣敏氏の実弟・畑崎重雄氏が会長、義弟の寺井秀蔵氏が社長を務めていたが、上山氏の社長就任に伴い、重雄氏は取締役相談役に退き、寺井氏は代表権のある会長に就いた。
上山氏は、十八番(おはこ)の“財務諸表力アップ”によって、業績の浮き沈みが激しいワールドを復活させることができるのだろうか。
(文=編集部)