上山氏は、4月14日に開催された同社の臨時株主総会および取締役会で、常務執行役員最高執行責任者(COO)から社長に昇格した。創業家以外からの社長登用は、同社初である。そんな上山氏は、意表を突く再建策を連発している。
赤字決算を黒字に変えるマジック
ひとつ目は、5月に開いた決算説明会で、赤字のはずだった決算を黒字と発表したことだ。
上山氏はワールドの業績について、2015年3月期の連結売上高は前期比3.5%減の2985億円、営業利益は同43.4%減の52億円だが、最終利益は同2.2倍の45億円だったと発表した。さらに、14年3月期にさかのぼり、16億円の最終赤字を20億円の黒字に修正したのだ。
赤字を黒字に変えたマジックの種明かしをしよう。会計基準を変更したのである。同社はそれまで、日本会計基準を適用していたが、15年3月期決算から国際会計基準(IFRS)に変更した。さかのぼって14年3月期にIFRSを適用すると、前述のように16億円の最終赤字は20億円の黒字に変わり、15年3月期の最終利益は45億円の黒字になった。
日本会計基準ではのれん代(買収額と買収先企業の時価評価純資産額との差額)の償却が必要だが、IFRSなら償却しないで済む。そのため、15年3月期の営業利益は52億円となったが、40億円相当ののれん代を償却していたら、利益は激減していたはずだ。
ワールドは05年にMBO(経営陣による買収)で上場廃止になった未上場企業である。そのため、株価を意識して利益をかさ上げする必要はないはずだ。会計基準をIFRSに変更した理由は、ただひとつしかない。黒字決算にするためである。
光輝く財務諸表を取り戻すために、過去最大規模のリストラを実施
2つ目の驚きは、過去最大規模の事業の見直しである。上山氏は、5月の記者会見で「固定費の削減には聖域を設けない」と明言した。
7月6~24日に、全社員の4分の1以上に当たる500人をめどに希望退職の募集を行った。40歳以上の正社員のほか、定年退職後に再雇用された60歳以上の社員が対象だ。8月12日には、453人が応じたことを明らかにしており、予定の9割が手を挙げたことになる。退職日は9月20日付となる。ワールドの社員数は、3月末時点で約1800人だ。同社はこの希望退職によって、年間約25億円の人件費削減を見込んでいるという。