日本自動車輸入組合の上野金太郎理事長は「モーターショーに対する各社の考え方が以前とは変わってきている。世界的な出展料の高騰や、投資に対するリターンもある」と述べ、費用対効果が得られないことが原因と指摘する。モーターショーへのブース出展には億単位のコストが必要と見られ、その割には販売やブランド認知の向上などの面でメリットが薄いためだ。
実際、東京モーターショーに限らず、自動車各社は世界各地でモーターショーへの出展を見直している。フランクフルトと交互に開催されている仏パリモーターショーでは2018年、VWやFCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)、フォード・モーター、日産自動車などが出展しなかった。こうした流れが東京にも波及している。
こうしたなか、トヨタは世界的なモーターショーで、1977年から40年以上にわたって出展してきたフランクフルトモーターショーへの出展を取りやめる。これに関しては、費用対効果の面もあるが、VWやBMWといったドイツ企業が出展しないことによって、主催者代表として東京モーターショーを盛り上げようと必死だった「豊田会長の顔に泥を塗ったことに対する抗議に意味がある」(関係者)と指摘する声もある。
ただ、ある自動車メーカー幹部は「自工会の会長会社のトヨタがフランクフルトモーターショーに出展しないことで、欧米企業に東京モーターショーへの出展を強く要請できなくなった」と肩を落とす。
モーターショーのあり方に変化
自動運転や電動化などで、自動車産業は大きく変化しようとしており、モーターショー自体も変化を迫られている。毎年1月に開催されてきた米デトロイトモーターショーでは、その直前に開催される自動運転車や最新技術の見本市「CES」を自動車メーカーが重視するようになった。そのため、デトロイトモーターショーは2020年から開催時期を6月に変更し、ショーの内容も大幅に衣替えする予定だ。
最新モデルや最新技術を世界で初めて公開する場としては、中国のモーターショーにその地位を奪われ、市場としての魅力も欠いている東京モーターショー。海外ブランドが相次いで撤退するなか、そのあり方を抜本的に見直す時期にきている。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)