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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

日本生命の妄言 生保業界、激烈な淘汰開始か 海外進出ブームで「いいカモ」に?

文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
日本生命の妄言 生保業界、激烈な淘汰開始か 海外進出ブームで「いいカモ」に?の画像1日本生命保険本社(「Wikipedia」より/663highland)

 国内生命保険2位の日本生命保険が同8位の三井生命保険を買収し、子会社化する方針を固めた。2016年3月末までの買収完了を目指し、買収額3,000~4,000億円規模で最終調整している。この買収が完了すれば、2015年3月期の保険料等収入で業界1位となった第一生命保険を抜き返し、日生は業界1位に返り咲くことになる。

 今回の買収劇について、私は8月27日に出演したあるテレビ番組で次のように解説した。

業界1位へのこだわり

 15年3月期決算で、戦後ずっと業界1位の座にあった日生が、第一に初めて抜かれた時の悔しがりようは話題になった。昨年11月の決算会見で日生の児島一裕常務は、「日本最大にこだわっている当社にとって、看過できない」とまで公言した。今回の三井買収劇は、この時から仕込まれていたと見ることができる。

 
 三井は保険料等収入が5,451億円なので(15年3月期、以下同)、これを日生の5兆3,371億円に足し合わせば、第一の5兆4,327億円を超えて業界1位を奪還できる。

 第一がガリバー日生の鼻を明かすことができたのはなぜか。

 それは、06年に設立した子会社、第一フロンティア生命保険の「親孝行」のお陰である。同社がみずほ銀行の窓口を通じて外貨建て個人年金保険を売りまくったのだ。その額は1兆円に上るといわれており、一方の日生の銀行窓販の売上額は2,000億円強にとどまった。

 なぜ第一がみずほ銀行経由でこれだけの売り上げを上げられたかというと、なんということはない。第一の筆頭単独株主がみずほ銀行だからだ。

 ここで興味深いのは、生保業界には国内で唯一、相互会社という形式が認められている。相互会社とは、形式上は保険加入者と運営者が組織する会社形態なのである。現在5社しか残っていないが、日生はその筆頭で株主を持たない。

 三井生命は株式会社であり、「三井」と名乗っているように大株主には三井住友銀行や三井住友信託銀行が名を連ねている。買収完了後も「三井生命」の名前を残すと報じられているのは、日生としては当然ながら第一がみずほ銀行を通じて行ったのと同じ営業行為を、三井グループで展開したいと考えているのであろう。

しぼむ国内、業界は集約される

 国内の生命保険市場は縮小し続け、生保会社は淘汰集約されていく。

 生命保険のほかに個人で加入する保険には、医療保険、がん保険、入院保険、年金型商品など、多様である。それらの合計保有契約高がピークとなったのは1996年で、1,495兆円あった。それが13年度には857兆円と半減している(生命保険協会による)。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
有限会社MBA経営 公式サイト
山田修の戦略ブログ

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