割れた、大手議決権行使助言会社の見解
株主総会の開催は、C&Iが求めた。南青山不動産や世彰氏個人の持ち分と合わせ黒田電気の発行済み株式総数の16.06%を保有している。招集通知によると、社外取締役の候補は世彰氏のほか、野村證券出身でルネサスエレクトロニクス執行役員常務兼CEO室長を務めた鈴木俊英氏。Scentan Venture Partners Limited Directorの金田健氏と、オリックス出身で旧村上ファンド関係者が関与する投資会社レノ社長を務める福島啓修氏。いずれもM&A(合併・買収)のプロだ。選任されれば純利益を今後3年間、100%株主に還元することや、企業買収による利益拡大を会社側に促すと主張した。
これに対して黒田電気の細川浩一社長ら経営陣は、「社外取締役はすでに取締役の半数の3人おり、ガバナンスは機能している」と反論。C&I側の要求を拒否した。6人の取締役のうち社外取締役は税理士の常山邦雄氏、本田技研工業出身で日信工業専務を務めた岡田重俊氏、弁護士の山下淳氏の3人だ。
会社側は「請求通り(利益の100%を)株主に還元すれば手元資金が枯渇し、中長期的な株主価値を損ねる」との理由で選任に反対した。
議決権行使助言会社は、海外機関投資家の議決権行使に影響を与える。今回のC&Iの議案をめぐり、業界を二分する大手議決権行使助言会社の見解は割れた。
米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、「(世彰氏らを選任すれば)本質的な議論ができていない現在の取締役会に、業界の状況やバランスシートの管理で新たな洞察をもたらす」と提案に賛成した。
これに対して、米グラスルイスは、「独立社外取締役はすでに3人おり、さらに村上氏を選任する決定的理由や主張を裏付けるデータに欠ける」と指摘し反対した。黒田電気はグラスルイスの見解を支持するコメントを出した。
結局、黒田電気株の4割近くを握る外国人株主のうち、13%強を保有するシュローダーが会社側についたことで勝敗は決したとみられる。黒田電気は液晶テレビの部品や自動車電装品の販売が好調で、15年3月期決算の純利益は過去最高の67億円。資本効率を示す指標であるROE(株主資本利益率)は9.9%と高い。
村上氏が社外取締役に入ると経営が不安定化して、かえって業績の悪化を招くと考えた個人株主が多かったことも影響した。