「生産性=効果×効率」という公式がある。
仕事の生産性を高めるためには、効果と効率の2つが大切という意味だ。この場合の効果とは「正しいことをする」ということで、戦略という言葉と重なる。英語では、「WHAT」がこれに当たる。
一方、効率とは「正しくやる」という意味だ。いわば戦術のことで、英語では、「HOW」が該当する。要は、「正しいことを正しくやれば、生産性は向上する」ということで、この考え方は正しい。
「効果と効率の、どちらの重要性がより高いか」といえば、もちろん効果だ。効果に結びつかないことをいくら効率よくやっても、生産性は高まらない。
ここまではいいのだが、経営者の中には「生産性=効果×効率×時間」という説を唱える人がいる。しかし、この考え方は間違っている。
なぜかというと、この公式を意訳すると、「生産性を高めるためには、正しい戦略を正しく戦術に落とし込み、長時間働くことが望ましい」ということになるからだ。根底には、残業を奨励したり、助長する考え方がある。
そもそも、効率という言葉の意味は「1単位時間を使って発生したアウトプット」で、時間の概念が含まれている。長ければ長いほどいい、というわけではない。費やした時間量より、アウトプットされた仕事の質のほうがはるかに重要である。
経営者には、「残業は美徳であり、望ましいことである」という人と、「残業は悪徳であり、根絶すべきものである」という考え方の人がいる。優れた経営者は、明らかに後者のほうだ。
前者が望ましいのであれば、1日24時間勤務体制で3交替制にすれば企業は最高の業績を挙げるということになるが、そんなことはあり得ない。
残業削減で過去最高益を出した企業
SCSKという大手IT企業がある。2011年に住商情報システム(SCS)とCSKの合併により誕生した企業だ。
同社が中井戸信英会長のリーダーシップの下で実践した数多くの改革策の中に、スマートワーク・チャレンジ20(スマチャレ20)という運動がある。
「20」というのは、前年比20%の残業削減と、有給休暇20日間の完全取得を意味している。この2つを達成した社員には、インセンティブを与えるという仕組みである。